鳥取民藝美術館
鳥取駅からほど近い栄町に佇む鳥取民藝美術館は、「民藝の美」を今に伝える鳥取を代表する文化施設です。昭和32年に建てられた趣ある建物は国の登録有形文化財にも指定されており、訪れる人を民藝の世界へと誘います。
鳥取民藝運動の父・吉田璋也が遺した場所
鳥取民藝美術館は、昭和24年(1949年)に鳥取の医師・吉田璋也(1898〜1972)によって創設されました。吉田は、思想家・柳宗悦(1889〜1961)が唱えた「民衆的工藝=民藝の美」という思想に深く共鳴し、その普及と新たな創造の指針を示すことを目的として、この美術館を鳥取における民藝運動の拠点として立ち上げました。
医師でありながら、工芸のさまざまな分野にわたって職人たちへの指導を行い、数多くの「新作民藝」を生み出した吉田の情熱と先見性は、今日も美術館の収蔵品やその精神のなかに息づいています。現在の建物は昭和32年に新築されたもので、落ち着いた風格を持つその外観・内装は、国の登録有形文化財建造物として認定されています。
5,000点以上の収蔵品が語る民藝の多様性
美術館の収蔵品は総数5,000点以上にのぼり、その内容は実に多彩です。朝鮮陶磁器をはじめ、日本・中国・西洋の古民藝、そして鳥取地方に伝わる民藝品、さらには吉田璋也自身が職人とともに作り上げた新作民藝など、時代や地域をまたいで集められた品々が並びます。
「民藝」とは、特定の芸術家が作る一点ものではなく、日々の生活のなかで使われることを前提に、無名の職人たちが丁寧に作り上げた工芸品のこと。その素朴さのなかにこそ真の美しさがある、という柳宗悦の哲学を体現した品々が、ここには揃っています。吉田は美術館の陳列替えを、鳥取の工人(職人)たちが本物から直接学ぶ場として活用しており、美術館が単なる展示施設にとどまらず、ものづくりの教育の場としても機能していたことがわかります。
開催中の企画展「日本のやきもの」
現在(2025年7月5日〜2026年5月10日)は、企画展「日本のやきもの」が開催されています。柳宗悦は日本各地を巡り、地方色豊かで実用性に富むやきものに美を見出しました。そして吉田璋也は、将来のものづくりの手本となるやきものを中心に収集し、その選び抜かれたコレクションを活用してきました。
本展では、鳥取の窯元の協力のもと、厳選した日本のやきものの魅力を紹介。産地ごとの個性や技法の違いを実際に目で確かめながら、民藝の視点でやきものの世界を楽しめる内容となっています。やきものに詳しくない方でも、その素朴な美しさと温かみをきっと感じ取れるはずです。
隣接する工芸店と割烹店も見どころ
美術館を訪れる楽しみは、展示だけにとどまりません。隣接するたくみ工芸店は、昭和7年(1932年)創業の日本初の民藝専門店で、その名は民藝運動の創始者・柳宗悦によって命名されました。鳥取をはじめ全国各地の陶器・ガラス・木工・染織品などの民藝品を取り扱っており、実際に手に取って購入することができます。展示を見て「使ってみたい」と感じた民藝品があれば、隣の工芸店でそのままお気に入りの一点を探せるのは大きな魅力です。
また、もう一方に隣接するたくみ割烹店は、昭和37年(1962年)に吉田璋也がデザインした空間のなかで開業した、民藝品を実際に使いながら食事を楽しむ「生活的美術館」として親しまれてきた食事処です。名物は「しゃぶしゃぶのルーツ」ともいわれる「すすぎ鍋」で、民藝の器とともに鳥取ならではの食文化を体験できます。
全国に広がる吉田璋也再評価の動き
近年、吉田璋也の業績を改めて見直す動きが全国的に高まっています。2026年3月からは、茨城県陶芸美術館を皮切りに「吉田璋也のデザイン-新作民藝運動がめざした未来」と題した大規模な巡回展が全国5会場で開催されており、約300点の作品・資料によって吉田の足跡を紹介する大回顧展として注目を集めています。鳥取民藝美術館もこの展覧会に協力しており、岐阜・東京・山口・鳥取と続く全国巡回の締めくくりは、2027年秋に鳥取県立美術館で予定されています。
民藝という言葉が生まれて100年を迎えようとする今、その思想を地域に根ざして実践し続けた吉田璋也の遺産は、あらためて多くの人に届けられようとしています。
訪問ガイド
開館時間は10時から17時まで。休館日は毎週水曜日(祝日の場合は翌日休館)と年末年始です。入館料は大人500円、学生300円で、高校生以下は無料。年間パスポート(1,000円)もあるため、繰り返し訪れたい方にも対応しています。
鳥取駅からは徒歩圏内のアクセスで、周辺の商店街散策と組み合わせて立ち寄るのにも最適です。民藝の世界に初めて触れる方も、すでに民藝に親しんでいる方も、鳥取の文化と暮らしの美学を深く味わえる場所として、ぜひ訪れてみてください。
アクセス
鳥取駅から徒歩約10分
営業時間
10:00~17:00、定休日: 毎週水曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
料金目安
大人 ¥500、学生 ¥300、高校生以下 無料、年間パスポート ¥1,000
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