
ブックスキューブリック 箱崎店
GALLERY
2001年、福岡で産声を上げた独立系書店ブックスキューブリック。その箱崎店は、本を売るだけの場所ではない。カフェ&ギャラリーとパン屋を同じ屋根の下に抱えた複合文化施設として、地域に根ざした知の拠点となっている。本を手に取り、焼きたてのパンを味わい、壁面の展示に見入り、著者の声を直に聴く——そうした体験がひとつの空間に重なるのが、箱崎店ならではの個性だ。
スタッフ選書が映す「この書店の目」
棚に並ぶ本は、スタッフが一冊ずつ目を通して選んでいる。推薦コーナーには、三品輝起著『波打ちぎわの物を探しに』(晶文社)、レイチェル・カーソン著・森田真生訳『センス・オブ・ワンダー』(筑摩書房)、エドワード・ゴーリー著・柴田元幸訳『青い煮凝り』、伊藤亜紗著『体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』といった顔ぶれが揃う。いずれも大型チェーン店の売れ筋とは一線を画す選書で、書店自身の読書眼と価値観が棚全体に宿っている。
人気ランキングが示す常連客の素顔
店内の人気ランキングには、この書店の客層がにじみ出る。1位には大井実著・晶文社刊『ローカルブックストアである〜福岡ブックスキューブリック〜』(1,760円)が君臨する。この店を紹介した本が自店のランキングトップに立つという事実は、ここを訪れる人々が単に本を消費しているのではなく、書店という文化そのものに関心を持っていることを示している。くどうれいん著『三十路の逆立ち』(講談社)、益田ミリ著『スーパーマーケット宇宙』(KADOKAWA)、平田オリザ著『寂しさへの処方箋』(集英社)、安達茉莉子著『私の生活改善運動』(三輪舎)など、文芸・エッセイを軸に独自のラインナップが続く。
著者と読者が出会うイベント空間
箱崎店の大きな特色のひとつが、継続的に開催されるトークイベントだ。近藤弥生子さんによる『オードリー・タンの母が綴る「家族と教育」』発売記念トーク、乾祐綺さんによる『西の果てで見つけた ポルトガル人のほどよい生きかた』発売記念トーク、小川仁志教授による市民のための哲学実践講座など、扱うテーマは多岐にわたる。村瀨孝生さんと繁延あづささんによる「老いまみれ、鶏まみれ」というタイトルのトークや、「ひらけごみ!」書籍化記念の「ごみを出さない本のつくりかた」のように、社会的テーマを軽やかに切り込む企画も目立つ。
ギャラリーと読書会——本棚の先にひろがる文化圏
ギャラリースペースでは光安保子個展「思ひ出」のような美術展示も定期的に開かれる。また「はこざき BOOK CLUB」として読書会を継続開催しており、2026年6月には第六回を迎えた(満席)。本を媒介に読者同士がつながる場として機能していることが、書店のコミュニティとしての側面を物語る。西日本新聞の「カリスマ書店員の激オシ本」コーナーへの掲載歴も、地元メディアからの信頼を示している。
独立系書店としての立場を自覚し、「独立系書店」という呼称そのものについて発信するほど、書店文化に対する姿勢は明確だ。チェーン書店との差別化を意識しながら、福岡・箱崎という土地に根ざした固有の文化圏を形成し続けている。
アクセス
福岡県福岡市東区箱崎1-5-14
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