
安楽寺
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別所温泉の山懐に静かにたたずむ安楽寺は、鎌倉時代中期に開かれた信州最古の禅寺です。山号を崇福山、院号を護国院と称し、曹洞宗の古刹として長野県上田市の歴史と精神文化を今に伝えています。境内に足を踏み入れると、杉木立の奥にたたずむ国宝の八角三重塔が静寂の中に浮かび上がり、訪れる者を鎌倉の面影が色濃く残る世界へといざないます。
鎌倉幕府とともに栄えた学問の道場
安楽寺を開いたのは樵谷惟仙和尚。鎌倉幕府の支配者として権勢を誇った北条氏の外護を受けて伽藍が整備され、最盛期には百余衆から五十衆もの学僧が集まる大寺院へと成長しました。当時は鎌倉の建長寺と並ぶ規模を誇り、信濃における仏法と禅の学びの中心道場として機能していたとされています。
その後、時代の変遷とともに寺運は傾いていきましたが、創建期の精神と遺産は脈々と受け継がれ、現在も多くの国宝・重要文化財を境内に留めています。この寺の歩みは、そのまま信州における禅宗文化の歴史そのものといえます。
日本に現存する唯一の遺構――国宝 八角三重塔
安楽寺最大の見どころは、境内の奥に建つ国宝の八角三重塔です。八角形の平面をもつ三重塔は日本でも極めて稀な建築形式で、鎌倉時代の禅宗様(唐様)建築の特徴を色濃く残しています。各層の軒が重なり合いながら空へと伸びる姿は、木立の緑と相まって静謐な美しさを放ちます。
禅宗様の細部――花頭窓や組物の意匠――は中国大陸から伝わった建築技法をそのまま伝えており、建築史の観点からも第一級の資料とされています。
境内に息づく鎌倉の遺産
八角三重塔だけではなく、安楽寺の境内には鎌倉時代から室町時代にかけての文化財が数多く残されています。
重要文化財に指定されているのは、開山である前開山樵谷惟仙和尚像と前二世の幼牛恵仁和尚像の二体。いずれも当時の高僧の面影を伝える貴重な彫刻です。上田市指定文化財の経蔵と、その内部に収められた輪蔵も見逃せません。経蔵は経典を収蔵した建物で、回転式の書架である輪蔵は実際に経典を積んだまま回転させることで功徳を得るとされた装置です。
境内には十六羅漢尊者像や四国八十八ヶ所札所勧請仏の七尊も安置されており、一堂にこれほどの遺産が集まる空間は、長野県内でも類を見ません。
「信州の鎌倉」塩田平への入り口として
安楽寺が位置する別所温泉一帯は「信州の鎌倉」と呼ばれ、鎌倉時代の仏教文化が色濃く根付いた地域です。安楽寺は塩田平の札所巡りの拠点のひとつとしても知られており、周辺には北向観音や常楽寺など歴史ある社寺が点在しています。温泉地と古刹が隣り合う別所温泉ならではの、落ち着いた巡礼の旅が楽しめるエリアです。
アクセス
〒386-1431長野県上田市別所温泉2361
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