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金沢のB級グルメ完全ガイド 金沢カレー・ハントンライス・金沢おでんを味わう
金沢のB級グルメは「洋食×ご当地ソウルフード」が主役
金沢の食といえば、近江町市場の海鮮や治部煮といった加賀料理の華やかさが思い浮かびますが、地元の人が日常で愛してやまないのは、もっと肩の力が抜けた一皿です。真っ黒なルーの金沢カレー、卵とフライが乗ったハントンライス、夏でも食べる金沢おでん——いずれも金沢市内で生まれ、あるいは根付き、世代を超えて受け継がれてきたソウルフードです。観光ガイドの王道メニューを一巡したあとに、こうしたB級グルメを訪ねると、金沢という街のもう一つの顔が見えてきます。ここでは金沢市で味わえるご当地グルメを、発祥のいきさつとともに紹介します。
真っ黒なルーの「金沢カレー」
金沢カレーは、いまや全国区になった金沢発祥のご当地カレーです。そのスタイルは、1961年に金沢で開いた洋食店「洋食タナカ」を営んだ田中吉和が考案したとされ、遅くとも1963年ごろには現在の形が固まっていたと伝えられています。
見た目からして個性的です。まず器が独特で、楕円形のステンレス製の皿に盛られます。ルーは黒に近い深い色で、ドロリと濃厚。皿の上にはサクサクのカツが乗り、その上から濃いソースがかけられ、さらに千切りキャベツが添えられるのが定番の構成です。そしてスプーンではなくフォークや先割れスプーンで食べるのも金沢流。これらが揃って初めて「金沢カレー」と呼ばれます。
金沢カレーを語るうえで面白いのが、店どうしの系譜です。元祖筋にあたる「カレーのチャンピオン」、その流れをくみ金沢の繁華街で営業を続ける「ターバンカレー」、そしてターバンカレーで修業した人物が興した「ゴーゴーカレー」——いずれも源流をたどると金沢の同じ洋食店に行き着きます。2000年代にゴーゴーカレーが全国へ広がったことで、金沢カレーの名は一気に知られるようになりました。価格はカツの乗ったカレーで1食800〜1,000円前後が目安。食べ歩きというより、しっかり腹を満たす一皿です。
金沢生まれの洋食「ハントンライス」
ハントンライスは、金沢の喫茶店や洋食店でおなじみのご当地洋食です。バターで炒めたケチャップライスの上に薄焼きの半熟卵をかぶせ、その上に白身魚(カジキマグロ)のフライや小エビのフライを乗せ、タルタルソースとケチャップで仕上げる——という、子どもから大人まで惹きつける反則級の組み合わせが特徴です。
発祥には諸説ありますが、金沢・片町に1957年(昭和32年)創業した老舗洋食店「グリルオーツカ」が元祖として広く知られています。1960年代の終わりごろに生まれたとされ、もう一つ、当時の金沢の有名なパン店がレストラン出店にあたって考案したという説も語られています。複数の発祥が語られること自体が、この料理が金沢の街にしっかり根を張っている証拠とも言えるでしょう。
名前の由来も独特です。ハンガリー料理にヒントを得たことから、その「ハン」と、フランス語でマグロを指す「トン(thon)」を組み合わせた造語、というのが通説です。今では金沢のコンビニ弁当にもなるほど市民の生活に溶け込んでおり、専門の老舗から駅周辺の食堂まで、金沢市内の幅広い店で味わえます。価格は1食1,000円前後が目安です。
一年中楽しめる「金沢おでん」
おでんといえば冬の食べ物という印象ですが、金沢では事情が違います。金沢おでんは、①地元金沢ならではの具材を使う、②店ごとに守る出汁が主役、③一年を通して食べられる——この三つが特徴とされ、専門店の多くが夏でも暖簾を出しています。市内には何十年と続くおでん割烹が点在し、地元の人が通年で通うのが金沢らしいところです。
具材も金沢ならでは。出汁をたっぷり吸う車麩、赤と白の渦巻き模様がおでん鍋に彩りを添える赤巻(かまぼこの一種)、弾力と甘みのあるバイ貝(標準和名エッチュウバイ)、ふわりとしたふかし、そして肉厚で煮崩れしにくい地元野菜の源助大根など、他県のおでんでは見かけない顔ぶれが鍋に並びます。
冬季限定の主役がカニ面です。香箱ガニ(ズワイガニのメス)の身・カニ味噌・内子・外子を甲羅にぎゅっと詰めて炊いたぜいたくな一品で、カニ漁が解禁される晩秋から冬の間だけのお楽しみ。この「カニ面」という名は、金沢で最も歴史あるおでん店のひとつが名付け親と伝えられています。一品の相場はおでん種で100〜400円ほど、カニ面はその希少さから別格の値付けになるのが通例です。
「金沢の台所」近江町市場の食べ歩き
金沢のB級食を語るなら、近江町市場(おうみちょういちば)は外せません。1721年に加賀藩前田家の御膳所として開かれ、2021年に開場300周年を迎えた、まさに「金沢の台所」です。鮮魚店や青果店がアーケードに密集し、地元の買い物客と旅行者が入り混じってにぎわいます。
ここでの楽しみ方は二つ。一つは市場の食堂で味わう海鮮丼です。脂の乗った高級魚のどぐろ、ぷりっとした甘えび、冬なら石川県産のブランドガニ「加能ガニ」(おおむね11月〜3月)など、北陸の日本海の幸を一杯に盛り込んだ丼が看板メニュー。良いネタが揃うぶん相場はやや張り、豪華な海鮮丼は2,000〜3,000円台になることも珍しくありません。
もう一つが食べ歩き。コロッケや海鮮串、焼き牡蠣、甘えびの唐揚げなどを店先で手にして、市場のアーケードを歩きながらつまむのが近年の定番です。こちらは一品数百円から楽しめるので、丼でしっかり食べるか、少しずつ食べ歩くか、お腹と相談しながら選べます。市場は午前中から昼にかけてが最も活気づくので、朝ごはんや早めの昼に訪れるのがおすすめです。
石川のソウルフードと金沢の餃子文化
金沢に滞在すると必ず目にするのが、緑の看板の8番らーめんです。1967年に石川県加賀市の国道8号沿いで生まれた野菜らーめんのチェーンで、店名は「国道8号」と、数字の8を横に倒すと無限大記号「∞」になることに由来します。発祥は加賀市ですが、いまや北陸(石川・富山・福井)に広く根を張り、金沢市内の各所でも気軽に立ち寄れる、石川県民にとってのソウルフードです。炒めた野菜をたっぷり乗せた一杯は、観光続きで野菜が恋しくなった旅行者にもありがたい存在です。
餃子好きなら、金沢市もりの里の専門店が出すホワイト餃子系の焼き餃子も覚えておきたいところ。皮はカリッと厚めに揚げ焼きにされ、野菜たっぷりの餡が詰まった金沢のソウルフードのひとつで、テイクアウトや冷凍販売でも親しまれています。海鮮や加賀料理の華やかさとはまた違う、こうした日常の味こそ、地元で長く愛され続けてきた金沢のもう一つの食文化です。観光の合間に一皿、ぜひ気軽に味わってみてください。
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