兵庫県朝来市に佇む竹田城跡は、「日本のマチュピチュ」とも呼ばれる国内屈指の絶景スポットです。秋の早朝、雲海に包まれた石垣群が対岸の立雲峡から望めるその光景は、一度見たら忘れられない感動をもたらします。
天空の城が生まれるまで――竹田城の歴史
竹田城の築城は室町時代中期、1441年ごろに但馬国(現在の兵庫県北部)を支配した山名氏によって命じられたと伝えられています。初代城主は山名氏の家臣・太田垣光景とされ、その後、戦国時代を通じて幾度かの変遷を経ながら城は拡張・整備されていきました。
最も城が充実した時代は16世紀後半、豊臣秀吉の家臣・赤松広秀(斎村政広)が城主を務めた時期です。この頃に現在も残る壮大な石垣群が築かれたと考えられており、穴太(あのう)積みと呼ばれる自然石を巧みに組み合わせた石垣は、400年以上の歳月を経た今もその姿を保っています。しかし1600年の関ヶ原の戦いで西軍についた赤松広秀は改易・処刑され、竹田城は廃城となりました。それ以来、天守をはじめとする木造建築物は朽ち果て、石垣のみが残されて現在に至ります。
この石垣遺構は国の史跡にも指定されており、南北400メートル・東西100メートルにわたる広大な縄張りは、山城としての規模の大きさを今に伝えています。城の周囲を歩けば、当時の武将たちが築き上げた防御の知恵と技術を肌で感じることができるでしょう。
雲海に浮かぶ絶景――竹田城跡の最大の見どころ
竹田城跡が「天空の城」として全国的に知られるようになったのは、秋の早朝に発生する雲海のためです。標高353メートルの虎臥山(とらふすやま)山頂に広がる石垣遺構が、円山川沿いの低地から立ち上る霧に包まれると、まるで城が空中に浮かんでいるかのような幻想的な光景が生まれます。
この雲海は、昼夜の寒暖差が大きく、前日に雨や霧が発生しやすい気象条件が重なった日の明け方に現れやすいとされています。特に9月下旬から11月下旬にかけての晴れた朝が狙い目で、早朝4時台から6時台の薄明りの中、朝靄に浮かぶ城跡の姿は格別です。雲海の発生頻度はその年の気候にも左右されるため、複数回訪れるリピーターも少なくありません。
城跡自体への入場も可能で(整備期間を除く)、間近で石垣の迫力を感じながら当時の縄張りを歩くことができます。天守台からは朝来市街や円山川流域を一望でき、雄大なパノラマが広がります。
立雲峡展望台――雲海を最高の角度で望む場所
竹田城跡の雲海を最も美しく眺めるポイントとして知られるのが、対岸の山腹に位置する立雲峡の展望台です。立雲峡は竹田城跡と向かい合う位置にあり、三段構えの展望台が整備されています。第一展望台からの眺望が最も広く、雲海の中に浮かぶ城跡全体をフレームに収めることができます。
展望台へはハイキングコースを歩いて向かいます。駐車場から第一展望台まで約20〜30分ほどの登山道が続き、足元はやや不整地になっている箇所もあるため、歩きやすいシューズと懐中電灯(早朝訪問の場合)は必ず持参してください。展望台は無料で利用できますが、雲海シーズンには早朝から多くの観光客が訪れるため、混雑を避けたい場合は平日の訪問がおすすめです。
カメラや三脚を持参する写真愛好家にも人気が高く、夜明け前から場所取りをする人も見られます。薄明りの中で山肌が徐々に染まっていく「モルゲンロート」と呼ばれる現象と雲海が重なった瞬間は、まさに一期一会の絶景です。
四季折々の表情――年間を通じた楽しみ方
竹田城跡と立雲峡は、雲海シーズンだけが見頃ではありません。春には立雲峡のヤマザクラが一斉に開花し、桜越しに望む竹田城跡の石垣との共演は、また格別の美しさを誇ります。開花時期は例年3月下旬から4月上旬で、「日本さくら名所100選」にも選ばれた景観を楽しめます。
夏は青々とした緑に包まれた城跡を散策するのに適した季節です。朝夕は涼しく、虎臥山を登り城跡を歩くハイキングを楽しむ人も多く訪れます。冬になると城跡が雪化粧をまとうことがあり、白銀の石垣が凛とした静寂の中に佇む姿は、雪国の山城ならではの厳かな風情を醸し出します。雪の日の翌朝は雲海も発生しやすいため、冬ならではの絶景が期待できます。
このように竹田城跡は春夏秋冬それぞれに異なる魅力があり、何度訪れても飽きることのない奥深さを持っています。
アクセスと周辺情報――旅の計画に役立つヒント
竹田城跡へのアクセスはJR山陰本線「竹田駅」が最寄り駅です。駅から城跡の登山口まで徒歩約40分のほか、シーズン中は観光バスや有料の送迎タクシーも運行されています。マイカー利用の場合は播但連絡道路「和田山IC」から約20分で竹田城跡周辺の駐車場に到着します。ただし雲海シーズンの早朝は駐車場が満車になることも多いため、早めの出発を心がけてください。
立雲峡への入場は有料(協力金制度を採用)で、シーズン中は早朝から開放されています。最新の開放時間や入場料については朝来市観光課や立雲峡管理事務所の公式情報を事前に確認することをおすすめします。
周辺には「道の駅 但馬のまほろば」や朝来市内の温泉施設もあり、観光後の立ち寄りにも便利です。また隣接する和田山エリアには竹田城の歴史を学べる「竹田城城下町ホテルEN」なども整備されており、1泊してじっくり朝の雲海を狙う旅程も人気を集めています。天空の城の神秘的な姿を求めて、ぜひ秋の夜明け前から足を運んでみてください。
交通
兵庫県朝来市内、最寄り駅またはバス停からアクセス
營業時間
散策自由
預算
無料