札幌市街から車でわずか約40分。都市の喧騒を離れ、豊平川の上流に広がる定山渓温泉は、北海道の自然と温泉文化が調和した特別な場所です。「札幌の奥座敷」の名にふさわしく、年間を通じて多くの旅人が心身の疲れを癒しに訪れます。
開湯の歴史と「定山渓」の名前の由来
定山渓温泉の歴史は、1866年(慶応2年)にさかのぼります。修験僧・美泉定山(みずいずみじょうざん)が、豊平川沿いに湧き出る温泉を発見し、この地に湯治場を開いたことが始まりとされています。温泉郷の名前はこの定山の名をとったものです。
以来150年以上にわたり、定山渓は北海道の開拓を支えた人々の疲れを癒してきました。明治・大正期には札幌からの温泉客が馬車や人力車で訪れるようになり、昭和に入って道路が整備されると一気に温泉地としての発展が進みました。現在は大型ホテルから風情ある旅館まで多彩な宿泊施設が立ち並び、北海道を代表する温泉郷として確固たる地位を築いています。
泉質と湯の特徴
定山渓の温泉は、主にナトリウム塩化物泉で、源泉の温度は60〜80度前後と高めです。塩分を含む泉質は保温効果が高く、湯上がりのぽかぽか感が長続きするのが特徴。冷え性や疲労回復、筋肉痛、神経痛などへの効能が知られており、昔から湯治の地として親しまれてきた理由のひとつです。
温泉郷には豊平川沿いに無料の足湯スポットも点在しており、宿泊客でなくても気軽に定山渓の湯を体験することができます。散策の途中に立ち寄れる「二見公園」の足湯は川のせせらぎを聞きながら足を温められる人気スポットです。また、豊平川の河原には「河原の湯」と呼ばれる野趣あふれる露天風呂(無料)もあり、大自然の中で入浴する非日常体験が楽しめます。
渓谷の絶景と自然散策
定山渓の魅力は温泉だけにとどまりません。豊平川が長い年月をかけて削り出した深い渓谷は、訪れる人々を圧倒する雄大な景観を誇ります。なかでも「二見吊橋」から見下ろす豊平川の流れと切り立った岩壁は定山渓を代表する眺めのひとつ。橋の上からは二見岩と呼ばれる巨岩ものぞめ、記念写真を撮る旅行者が絶えません。
また、温泉街の奥に位置する「定山渓ダム」と「さっぽろ湖」も見逃せないスポットです。ダム湖に映る山々のシルエットは静寂に満ちており、喧騒を忘れてひたすら自然と向き合える空間が広がっています。周辺には遊歩道も整備されており、野鳥のさえずりや渓谷の音を聞きながら、のんびりとした森林散策が楽しめます。
四季折々の楽しみ方
定山渓は季節ごとにまったく異なる表情を見せてくれる温泉地です。
春(4〜5月)は残雪が残る山肌と芽吹き始めた新緑のコントラストが美しく、静かな早春の渓谷を独り占めできる穴場のシーズンです。夏(6〜8月)は青々とした木々が渓谷を彩り、川のせせらぎが涼しさを運んでくれます。温泉でゆっくり体を温めた後に澄んだ空気の中を散歩するのは、この季節ならではの贅沢です。
そして定山渓が最も賑わうのが秋(9〜11月)。周辺の山々が赤・黄・橙に染まる紅葉の季節は「定山渓紅葉まつり」も開催され、ライトアップされた渓谷が幻想的な夜景を作り出します。特に10月中旬から下旬にかけての紅葉ピーク時は多くの観光客が訪れ、温泉と紅葉という北海道の秋を代表する組み合わせを心ゆくまで堪能できます。
冬(12〜3月)は一面の銀世界に包まれた雪景色の中で露天風呂に浸かるという、北海道温泉旅行の醍醐味を体感できる季節です。「定山渓温泉 雪灯路(ゆきとうろ)」が2月に開催され、雪でつくられたキャンドルの灯りが温泉街をやさしく照らし出す幻想的なイベントとして人気を集めています。
アクセスと周辺観光情報
札幌市内からのアクセスは便利で、JR札幌駅や地下鉄真駒内駅から定山渓温泉行きの直通バス(じょうてつバス)が運行されています。所要時間は真駒内駅から約40分、札幌駅からは約70分が目安です。マイカーを利用する場合は、札幌市街から国道230号線を南下するルートが一般的で、こちらも約40〜50分ほど。冬季は積雪・路面凍結に注意が必要ですが、除雪体制が整っているため通年アクセスが可能です。
定山渓から足を延ばせば、北海道を代表するリゾート地・ニセコや洞爺湖温泉方面へのドライブコースにもつながります。また、札幌市内の観光スポット(大通公園、すすきの、北海道大学など)と組み合わせた旅程を組みやすい点も、定山渓が道内外からの旅行者に選ばれ続ける理由のひとつです。
温泉街には土産物店や食事処も充実しており、北海道産の食材を使った郷土料理や新鮮なジンギスカン、海鮮料理なども楽しめます。日帰り入浴を受け付けている宿泊施設も多いため、宿泊せずに立ち寄りで湯を楽しむこともできます。札幌観光の合間に「少し足を延ばして本格的な温泉に浸かりたい」という旅行者にとって、定山渓温泉はまさに理想的な選択肢と言えるでしょう。
交通
北海道札幌市内、最寄り駅またはバス停からアクセス
營業時間
10:00〜21:00
預算
500〜1,500円