
会津若松市街から車でわずか10分ほど、緑豊かな山間に静かに湯けむりを漂わせる会津東山温泉。飯坂温泉、鳴子温泉とともに「奥羽三楽郷」の一つに数えられるこの名湯は、約1,300年の歴史を持ち、東北を代表する温泉地として全国から多くの湯治客・観光客を迎え続けています。
奈良時代に始まる、悠久の歴史
会津東山温泉の起源は、奈良時代にまでさかのぼります。伝説によれば、諸国を旅しながら寺院や温泉を開いたとされる高僧・行基菩薩がこの地に湯を発見したと伝えられており、その歴史の深さを物語っています。
江戸時代に入ると、会津藩主・松平家の湯治場として整備され、城下町からも近いことから藩士や庶民に広く親しまれるようになりました。東山川(湯川)沿いに旅籠が立ち並ぶ温泉街の原型はこの頃に形成されたとされています。幕末・明治の動乱期においても、傷ついた会津藩士たちがこの温泉で療養したという歴史的な記録も残されており、地域の人々にとってかけがえのない癒しの場であり続けてきました。
明治以降は交通の整備とともに観光地としての側面も強まり、文人墨客にも愛される風雅な温泉地として広く知られるようになります。現在も老舗旅館が軒を連ね、その長い歴史と品格を今に伝えています。
美肌の湯として名高い、豊かな泉質
会津東山温泉の湯は、アルカリ性単純温泉を主体とし、肌にやわらかく馴染む滑らかな湯触りが特徴です。pH値が高めのアルカリ性の湯は、古い角質を穏やかに落とし、入浴後の肌をしっとりと整える効果があるとされることから、古くより「美人の湯」「美肌の湯」として広く知られています。
湯温は40〜42度前後の適温で、長湯にも向いています。神経痛や筋肉痛、疲労回復、冷え性などへの効能も知られており、日々の疲れを溶かし出すような温もりが訪れる人々を包み込みます。各旅館では内湯・露天風呂をはじめ、源泉かけ流しにこだわった湯船を設けているところも多く、本物の湯の恵みを存分に堪能できます。
温泉街には無料または低価格で利用できる足湯スポットも点在しており、散策の途中に気軽に立ち寄って旅の疲れを癒すことができます。また、日帰り入浴を受け付けている宿泊施設も多いため、宿泊しない場合でも会津東山温泉の湯を楽しむことが十分可能です。
湯川沿いを歩く、温泉街の見どころ
会津東山温泉の魅力は湯だけにとどまりません。湯川に沿って形成された温泉街そのものが、散策の絶好のフィールドです。川のせせらぎを聞きながら石畳の道を歩けば、老舗旅館の風格ある外観、情緒あふれる橋、湯けむりが漂う風景が続き、日常から切り離されたような時間の流れを感じることができます。
温泉街の中心にある「湯の郷公園」は、四季折々の花や樹木が植えられた緑豊かな憩いの場で、散策のひと休みにちょうどよいスポットです。また、温泉地ならではの土産物店や地元の食材を使った飲食店も点在しており、会津の郷土食である「こづゆ」(干し貝柱をベースにした椀料理)や「ニシンの山椒漬け」といった名物料理を味わいながら、食文化の深みも楽しめます。
旅館の夕食では会津産の山菜や川魚、地元の農産物をふんだんに使った懐石料理が提供されることが多く、舌でも会津の豊かさを感じることができます。食後は浴衣姿で温泉街をそぞろ歩く──そんなゆったりとした時間こそ、会津東山温泉ならではの旅情です。
四季それぞれの表情を楽しむ
会津東山温泉は、訪れる季節によってまったく異なる表情を見せてくれます。
春は桜の季節。周囲の山々に山桜が咲き誇り、薄紅色の花と温泉の湯けむりが織りなす風景は格別です。新緑の季節に入ると、青々と生い茂る木々に囲まれた露天風呂での湯浴みが、清々しい気分をもたらしてくれます。
夏は避暑地としても親しまれ、涼しい山の空気と温泉の組み合わせが旅人を迎えます。会津若松市内では夏祭りも多く開催されるため、観光と合わせて訪れるのに絶好の季節です。
そして最も賑わいを見せるのが秋の紅葉シーズンです。10月下旬から11月中旬にかけて、湯川沿いのケヤキやモミジが鮮やかな赤・橙・黄に染まり、温泉街全体が燃えるような色彩に包まれます。夜にはライトアップが行われることもあり、幻想的な秋の夜長を演出します。露天風呂から紅葉を眺めながらの入浴は、多くの人が「一度は経験したい」と語る至高の体験です。
冬は雪景色の中の温泉という、東北ならではの醍醐味が味わえます。雪をまとった木々と白煙を上げる露天風呂の組み合わせは絵画のような美しさで、静寂の中に身を沈める贅沢な時間を提供してくれます。
会津観光の拠点として、周辺スポットも充実
会津東山温泉は、会津若松市内の主要観光地へのアクセスが非常に良好で、東北旅行の拠点としても最適です。
温泉地から車で10分ほどの距離には、会津を象徴する名城「鶴ヶ城(若松城)」があります。戊辰戦争でも落城しなかったと伝わる堅城で、現在は天守閣内が博物館として公開されており、会津の歴史を深く学ぶことができます。春には約1,000本の桜が城を彩り、東北屈指の花見スポットとしても有名です。
また、幕末の悲劇を今に伝える「飯盛山」も近く、白虎隊の墓や自刃の地として知られるこの山からは、鶴ヶ城を望むことができます。歴史に思いを馳せながら訪れる人が後を絶ちません。さらに、会津藩家老・西郷頼母の邸宅を復元した「会津武家屋敷」も見応え十分で、江戸時代の武家の暮らしを体感できます。
アクセス情報
会津東山温泉へのアクセスは、JR只見線・磐越西線が乗り入れる会津若松駅が最寄りの玄関口です。会津若松駅からは路線バス(ハイカラさんバスまたは東山温泉行きバス)が運行しており、約15〜20分で温泉街に到着します。マイカー利用の場合、磐越自動車道・会津若松ICから約20分ほどです。各旅館に駐車場が完備されているため、車での訪問も便利です。
東京からは東北新幹線で郡山駅まで向かい、磐越西線に乗り換えて会津若松駅まで約3時間が目安となります。仙台方面からも磐越西線を利用してアクセス可能で、東北各地から訪れやすい立地にあります。
交通
福島県会津若松市内、最寄り駅またはバス停からアクセス
營業時間
10:00〜21:00
預算
500〜1,500円