丸亀城は、瀬戸内海を望む香川県丸亀市の中心部に堂々とそびえる名城です。日本に現存する12の天守閣のうちの一つであり、とりわけ「日本一高い石垣」として名高いその姿は、訪れるすべての人に深い感動を与えます。城下町の歴史と瀬戸内の自然が調和するこの場所は、四国を代表する歴史遺産として、国内外から多くの旅人を引きつけてやみません。
築城の歴史と城主たちの物語
丸亀城の歴史は、戦国時代末期にさかのぼります。1597年(慶長2年)、豊臣秀吉の家臣であった生駒親正(いこまちかまさ)が讃岐一国を与えられ、この亀山(標高66メートル)の地に城の築造を開始しました。生駒氏は四代にわたって讃岐を治めましたが、1640年(寛永17年)に御家騒動(生駒騒動)によって出羽国へ移封となります。
その後、備中国(現在の岡山県)から山崎家治が入城し、城郭の整備が本格的に進められました。現在残る壮大な石垣の多くはこの時代に積み上げられたものです。山崎氏は三代で断絶し、1658年(万治元年)に京極高和が播磨国から転封されると、丸亀藩の礎が固まります。京極氏のもとで1660年(万治3年)、現在の三重三階の天守閣が完成しました。以降、京極家は明治維新まで12代にわたって丸亀を治め続け、城と城下町の発展に貢献しました。
日本一の石垣が生み出す圧倒的な存在感
丸亀城を語る上で欠かせないのが、その驚異的な石垣です。本丸・二の丸・三の丸・帯曲輪の四段にわたって積み重ねられた石垣の総高さは、実に約60メートルに達します。これは現存する城郭の中で日本最高を誇り、「石垣の名城」と称されるゆえんです。
石垣の最大の特徴は、「扇の勾配」と呼ばれる美しい反り。下部は緩やかで上部に向かうにつれて急勾配となるこの曲線は、技術的な強度を高めるとともに、外観に独特の優美さをもたらしています。近くで見上げると、その垂直に近い迫力に思わず息をのみます。一方で、城の入口付近に立ち全体を眺めると、積み重なる石垣のシルエットが空に映える美しさに心を奪われます。
使用された石は主に花崗岩で、「野面積み(のづらづみ)」「打込接(うちこみはぎ)」「切込接(きりこみはぎ)」など、時代によって異なる積み方が見られます。これは城の増改築の歴史を石垣自体が物語っているとも言え、石垣マニアにとっては一枚一枚の石が語りかけてくる宝庫でもあります。
現存天守が伝える江戸の建築美
急坂の石段を登り切った先に待つ天守閣は、高さ約15メートルの三重三階構造。外観は白漆喰の壁と黒い連子窓(れんじまど)が映える清楚な姿で、全国に現存する天守の中でも最小クラスに属しますが、そのコンパクトさがかえって精巧な美しさを際立たせています。
国の重要文化財に指定されており、内部も見学可能です。急な木製の階段を上りながら、江戸時代の大工たちの技が随所に感じられる梁や柱の組み方を観察できます。最上階まで登ると、眼前に広がる景色は格別です。丸亀市街地と丸亀港、瀬戸内海の穏やかな青い海、天気の良い日には遠く小豆島や瀬戸大橋まで見渡すことができます。城内には歴代城主にまつわる史料や武具の展示もあり、歴史の息吹をより深く感じながら過ごせます。
四季折々の魅力――桜から紅葉まで
丸亀城は訪れる季節によってまったく異なる表情を見せてくれます。最もにぎわうのは春の桜の季節。4月上旬になると、城内に植えられた約200本のソメイヨシノが一斉に開花し、石垣を背景に桃色の花々が咲き誇る様は、まさに絵画のような美しさです。夜間にはライトアップも行われ、昼とはまた違う幻想的な雰囲気の中でお花見を楽しめます。毎年多くの市民や観光客が訪れ、丸亀城は香川を代表する花見スポットとして親しまれています。
夏は緑深い木々に囲まれた石垣のコントラストが清々しく、セミの声とともに歴史散策が楽しめます。秋には城内の木々が紅葉し、赤や黄色に染まった葉と石垣の組み合わせが趣深い雰囲気を醸し出します。冬場は空気が澄んで遠望が利き、白い天守が青空に映える凛とした姿が印象的です。雪が積もった日には、ほとんど見ることのできない雪化粧の丸亀城という稀少な光景に出会えることもあります。
周辺観光とアクセス情報
丸亀城の周囲にはお濠が巡らされており、その水辺の景観もまた一つの見どころです。お濠沿いを散策しながら城の全景を眺めるのはもちろん、お堀を泳ぐ鯉や鳥たちを眺めながらゆったりと過ごすのも良いでしょう。城の東側には「骨付鳥」や「讃岐うどん」など香川グルメを楽しめる飲食店が並び、観光の合間に地元の味覚を堪能できます。特に丸亀は讃岐うどん発祥の地ともいわれ、個性豊かなうどん店が点在しています。
さらに足を延ばせば、日本三大水城の一つ「高松城跡(玉藻公園)」や金刀比羅宮(こんぴらさん)も日帰りで訪れることができ、香川の歴史を一日かけて巡るコースが組めます。
アクセスはJR丸亀駅から徒歩約10分と非常に便利です。駅を出ると城の天守閣がすぐに視界に入り、歩きながらその全容が少しずつ近づいてくる感覚も旅の醍醐味の一つです。車の場合は城周辺に駐車場が整備されています。開城時間は通常9時から16時30分(入場は16時まで)で、天守閣への入場には観覧料が必要です。日帰り観光はもちろん、高松や琴平などと組み合わせた宿泊旅行の拠点としても最適なロケーションです。
交通
香川県丸亀市内、最寄り駅またはバス停からアクセス
營業時間
9:00〜17:00
預算
300〜600円