日暮里駅から徒歩圏内、台東区下谷の静かな住宅街に鎮座する三島神社は、鎌倉時代の武将・河野通有の信仰に起源を持つ歴史深い神社です。愛媛・大山祇神社を御本社に仰ぎ、山と海の神様を祀る全国でも珍しい都内の鎮守として、地域の人々に長く親しまれています。
御祭神と神話の世界
三島神社の御祭神は、大山祇命(おおやまつみのみこと)。「やまつみ」とは「山を持ち坐す」という意味を表し、大山祇命は山の神様として知られています。しかし、その御神徳はそれだけにとどまりません。『伊予国風土記』では「和多志大神(わたしのおおかみ)」とも称されており、「わた」が海の古語であることから、海の神様でもあるとされています。山と海、両方を司る神様というのは大変珍しく、全国各地から幅広い信仰を集める理由のひとつです。
さらに大山祇命は、天照大御神の兄にあたる神様で、「日本総鎮守」とも称えられる存在。配祀として祀られる上津姫命(磐長姫命)と下津姫命(木花開耶姫命)は大山祇命の娘にあたり、日本神話の中でも有名なエピソードが残っています。高天原から降臨した邇邇藝命(ににぎのみこと)が美しい木花開耶姫命に一目惚れし、父・大山祇命に結婚の許しを求めた場面は、古事記にも記されている名高い神話です。大山祇命は娘の磐長姫命も共に差し出しましたが、邇邇藝命は容姿の醜さを理由に磐長姫命を返してしまいました。これにより邇邇藝命の子孫は長命ではなくなったと伝わります。現在、磐長姫命は長寿の守護神として、木花開耶姫命は火の神・安産の神として信仰を集めており、さまざまな願いを持つ参拝者が訪れます。
鎌倉時代から続く鎮座の歴史
三島神社の起源は、弘安4年(1281年)の元寇(蒙古襲来)にさかのぼります。伊予国(現在の愛媛県)の武将・河野通有は、出陣に際して氏神である大山祇神社(三島大明神)に戦勝を祈願しました。すると、神の使いとされる白鷺(しらさぎ)が戦場で導きを見せ、みごと勝利を収めたと伝えられています。
凱旋後、夢の中で神のお告げを受けた河野通有は、武蔵国豊島郡に三島大明神の分霊を迎え、上野山内の河野氏の館に鎮祭しました。これが三島神社の始まりとされています。
その後、慶安3年(1650年)には徳川三代将軍・家光公の命により金杉村(現在の台東区根岸)へ遷座。宝永7年(1710年)には社地が幕府の御用地に指定されたため、浅草小揚町(現在の台東区寿)へと移ります。氏子たちが「氏神様が遠くて困る」と念願したことから、分霊を現在の台東区下谷に勧請し、今日の三島神社が成立しました。御本社は愛媛県今治市大三島にある大山祇神社(元国幣大社)であり、その縁は現在も受け継がれています。なお、三島神社の宮司は代々、河野通有の子孫が奉仕しているという点も、他に類を見ない特色のひとつです。
年間を彩る祭典と行事
三島神社では一年を通じて多彩な祭典が執り行われ、地域の信仰と文化を支えています。
新年を告げる**元旦祭(歳旦祭)**は1月1日午前11時から。国の繁栄と家内安全を祈るとともに、穀物の実りと生命をもたらす歳神を迎える、年中行事の中でも特に重要な祭典です。
2月3日の**節分祭(追儺祭)**では、赤鬼・青鬼に扮した町内の方々が太鼓の音とともに拝殿に現れ、「鬼は外 福は内」の掛け声とともに炒った大豆をまいて鬼を払います。地域の人々が参加するにぎやかな厄除けの儀式で、子どもたちにも人気のある行事です。
3月6日の**火除稲荷祭**は、摂社・火除稲荷社の大祭。火難除け・防災・商売繁盛を祈願するほか、神前に供えられたお菓子を参拝した子どもたちに分けるという心温まる神事も行われます。
6月15日前後の土日に行われる**例大祭(れいたいさい)**は、神社で最も重要な祭典です。宮司の「オー オー」という警蹕の掛け声とともに本殿の扉が開かれ、お神輿に乗った神様が氏子の町を練り歩きます。特筆すべきは、氏子の代表者が白装束をまとい、幣帛(神様への献上物)を唐櫃に納めて行列を組む「献幣使神事」で、全国でも特例とされる珍しい神事です。
6月30日の**大祓式(夏越の祓)**では、参拝者が紙の人形(ひとがた)に名前・生年月日・年齢を記し、身体を撫でてから息を三回吹きかけることで、知らず知らずのうちに積み重なった罪や穢れを祓い清めます。心機一転、清らかな気持ちで夏を迎えるための行事として、多くの参拝者に親しまれています。
参拝のご案内とアクセス
三島神社は、東京都台東区下谷3丁目7-5に位置しています。JR山手線・常磐線の日暮里駅から徒歩でアクセスでき、京成本線・日暮里舎人ライナーの日暮里駅からも近く、複数路線を利用できる便利な立地です。
境内は都会の喧騒を感じさせない落ち着いた雰囲気で、散策の途中に立ち寄るにもぴったりの場所。お問い合わせは電話(03-3873-0172)、または公式サイトにて確認できます。初詣や例大祭の時期は地域の人々で賑わいますが、普段は静かな境内でゆっくりと参拝を楽しめます。
山と海の神・大山祇命、長寿の磐長姫命、安産の木花開耶姫命と、訪れる目的に合わせてさまざまなご利益を受けられる三島神社。鎌倉時代から続く歴史と、今も変わらぬ地域の信仰に触れる旅として、ぜひ足を運んでみてください。
交通
地下鉄日比谷線入谷駅から徒歩約5分、JR山手線鶯谷駅から徒歩約8分
營業時間
預算