飛騨高山の古い町並みにひっそりと、しかし確かな存在感を放つ酒蔵がある。江戸時代から続く伝統と、飛騨の大自然が育んだ水と米。その二つが出会う場所、舩坂酒造店は、訪れる人を日本酒の豊かな世界へと誘う。
200年の歴史を刻む飛騨の酒蔵
岐阜県高山市上三之町105番地。重要伝統的建造物群保存地区として名高い「古い町並」のど真ん中に、舩坂酒造店はある。約200年前から酒造りを営んできたこの蔵は、城下町の風情をそのまま受け継ぐ木造建築が軒を連ねる通りに溶け込むように立ち、歴史の重みをたたえた佇まいで旅人を迎え入れる。
飛騨高山は古くから「小京都」とも称され、江戸幕府の直轄地として栄えた地域だ。その豊かな文化的土壌の中で、舩坂酒造店は代々酒造りの技術を磨き続けてきた。単なる観光スポットとしての知名度にとどまらず、日本酒愛好家の間でも高い評価を受けており、Googleクチコミでは1,000件を超えるレビューで4.4という高い評価を獲得している。地元の人々からも観光客からも愛され続ける理由は、その酒質の確かさにほかならない。
飛騨の自然が生む、上質な日本酒
舩坂酒造店の酒造りの根幹を支えるのは、日本アルプスに連なる飛騨の山々が育んだ豊かな自然環境だ。山深い飛騨の地は良質な湧水に恵まれており、その清冽な水が酒造りに欠かせない存在となっている。水と並んで重要なのが酒造好適米の品質で、この地の気候風土が育む良質な米を厳選して使用している。
代表銘柄の「深山菊(みやまぎく)」は、その名の通り飛騨の深山に咲く菊をイメージした清冽な味わいが特徴だ。大吟醸から上撰まで幅広いラインアップがあり、それぞれに異なる個性と魅力を持っている。秋には「ひやおろし」と呼ばれる季節限定の特別純米深山菊が登場し、日本酒ファンを楽しませる。また、「どろどろ濁原酒」のような個性的な商品や、ぶどう酒「ぶど次郎」、みかん酒「蜜柑子(かんこ)」など、日本酒の枠を超えた多彩なラインアップも用意されており、日本酒が苦手な方にも楽しめる工夫が施されている。
酒造りのプロセスは、精米から始まり洗米、蒸米、麹造り、酒母造り、醪(もろみ)造り、上槽、ろ過、火入れ・熟成、そして瓶詰めへと続く。各工程において長い年月をかけて磨き上げた技術が惜しみなく注がれており、公式サイトでは一部の工程を写真や動画で紹介するなど、酒造りへの真摯な姿勢が伝わってくる。
「日本酒のテーマパーク」を体験する
舩坂酒造店が自らを「日本酒のテーマパーク」と称するだけあって、その施設は単なる酒蔵の枠を大きく超えている。訪問者が最も楽しめる設備のひとつが、気軽に試飲ができるコーナーだ。日本酒コインサーバーを利用すれば、様々な銘柄を少量ずつ試しながら自分好みの一本を探す楽しさを体験できる。飲み比べを通じて日本酒の奥深さに触れるこの体験は、日本酒初心者にとっても上級者にとっても魅力的だ。
また、敷地内にはレストランや土産処も併設されており、飛騨の食文化と日本酒を組み合わせた総合的な体験が可能となっている。特に敷地内のレストラン「味の与平」は、訪日旅行者が選ぶTOP20に選出されたこともある実力派で、東京・大阪・福岡・札幌・京都といった大都市の名店が並ぶ中、人口約8.8万人の高山市から唯一選ばれたという快挙を達成している。舩坂酒造店の酒と共に飛騨の食を楽しむひとときは、高山観光の中でも特別な思い出となるだろう。
酒蔵の雰囲気をゆったりと楽しめる憩いの広場も設けられており、試飲の後に一息つくことができる。旅の疲れを癒やしながら、古い町並みの空気と共に飛騨の酒を味わう贅沢な時間が待っている。
農林水産省認定と地域への貢献
2026年、舩坂酒造店は農林水産省が新たに創設した「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書」において、初代認定事業者に選出された。この認定は、単に優れた酒を造るだけでなく、地域の農業や文化の振興に積極的に貢献してきた同店の姿勢が高く評価されたことを示している。
飛騨高山の農業と結びついた酒造りの取り組み、地域文化の継承への関与、そして観光を通じた地域経済への貢献。こうした多面的な活動が認められた結果は、舩坂酒造店が単なる酒蔵ではなく、地域を支える重要な存在であることを物語っている。
訪問の際に知っておきたいこと
舩坂酒造店の営業時間は8時30分から18時00分まで。高山駅から徒歩圏内にある「古い町並」の中心部に位置しているため、観光の起点や締めくくりとして立ち寄りやすい立地だ。電話番号は0577-32-0016で、詳細な情報は公式サイト(https://www.funasaka-shuzo.co.jp/)で確認できる。
お土産として日本酒を選ぶ際には、定番の深山菊シリーズはもちろん、季節限定品や個性的なラインアップにも注目したい。冬に訪れる機会があれば、その時季ならではの「しぼりたて生酒」をぜひ試してみてほしい。搾りたての新鮮な風味は、瓶詰めされた商品とはまた異なる感動を与えてくれる。
飛騨高山の古い町並みを歩くなら、舩坂酒造店への立ち寄りは外せない。200年の歴史が積み重ねてきた酒造りの技と心を、一杯の酒を通じて感じてほしい。
交通
高山駅から徒歩約15分
營業時間
8:30〜18:00
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