江ノ島といえば、賑やかな仲見世通りや江ノ島神社を思い浮かべる人が多いだろう。しかし島の西側には、観光客の喧騒を離れた静かな場所がひっそりと存在する。それが「西浦漁港」だ。
江ノ島に残る唯一の砂浜と静かな港
西浦漁港は、江ノ島島内で唯一砂浜が残る場所として知られている。かつて江ノ島には東浦と西浦という2つの漁港があったが、東浦の磯は埋め立てられてしまい、現在は西浦だけが小漁港として姿をとどめている。
かつては漁師たちが利用していたこの港も、今ではサーフボードやカヌーの乗り入れ場として活用されており、マリンスポーツを楽しむ人々の姿も見られる。冬場には湘南の名物であるシラスウナギ漁が行われることもあり、季節によって表情を変える港の風景が訪れる人を迎えてくれる。
江ノ島への観光客が多く集まる仲見世通りや参道からは少し外れた小さな路地を進んだ先にあるため、観光客にはあまり知られていないのも特徴だ。人気の観光地である江ノ島の中でも、知る人ぞ知る穴場スポットとして地元の人々や常連客に愛されてきた場所である。
晴れた日には富士山と相模湾の絶景
西浦漁港の最大の魅力のひとつが、その眺望の素晴らしさだ。天候に恵まれた晴れた日には、相模湾の向こうに雄大な富士山の姿を望むことができる。堤防に立って富士山を眺める景色はもちろん、沖を往来する遊覧船「弁天丸」と富士山のツーショットを写真に収められるスポットとしても人気が高い。
また、夕暮れ時のこの場所は格別だ。港へと続く小さな路地からも美しい夕日を眺めることができ、時期と時間帯によっては路地と太陽が一直線に並び、水平線まで続く光の道が出現することもある。この光景はまさに一期一会で、訪れたタイミングにしか見られない特別な瞬間だ。夕日の美しさは広く知られており、かながわの景勝50選にも選ばれた稚児ヶ淵からの眺めと合わせて、島の西側エリアは日没時間帯に多くの人が訪れる。
なお、江ノ島で花火大会が開催される際には、この穴場スポットも多くの人で賑わうという。普段の静けさからは想像できないほどの活気を見せる夜があることも覚えておきたい。
磯歩きと戦争の記憶をたどる散策
潮が引いている時間帯には、西浦漁港周辺から江ノ島の横側を歩いて散策することができる。磯の岩場をゆっくりと歩きながら、潮の香りや波の音を感じる散策は、観光地らしい賑やかさとは一線を画した穏やかなひとときを過ごせる。カメラを手に美しい風景を撮影する人や、ただのんびりと過ごす人など、思い思いのスタイルで楽しめるのがこのエリアの良さだ。
散策を続けていくと、岩をくり抜いた洞穴を見つけることができる。これは第二次世界大戦中に利用された砲台跡で、江ノ島にはこのような歴史の痕跡が複数存在している。観光地としての華やかなイメージの裏に、こうした歴史が刻まれていることを、足を運んで初めて実感できる。また、島の横側を歩いていくと弁天橋を望む景色も広がり、島を海側から見るという普段とは異なる視点で江ノ島を楽しむことができる。
周辺で味わえる海鮮グルメ
西浦漁港へ向かう道中には、美味しい海鮮を提供する食事処が点在している。「ハルミ食堂」では海鮮丼や刺身、御膳など豊富な海鮮メニューが揃い、地元の海の幸をたっぷりと堪能できる。また、同じく漁港へ向かう途中にある「ゑじま」は、行列ができるほどの人気を誇る食事処で、刺身定食やランチメニューが揃っている。
江ノ島の玄関口に広がる弁財天仲見世通りには、旅館や飲食店、土産店が軒を連ねるレトロな参道が続く。しらすや磯料理はもちろん、饅頭やたこせんべいなど江ノ島ならではの名物も充実しており、西浦漁港の散策前後に立ち寄るのにぴったりだ。江ノ島の新鮮な海の幸と穴場スポットの静けさを、一度の訪問でどちらも楽しめるのが嬉しいところだ。
アクセスと訪問時の注意点
西浦漁港へは、小田急江ノ島線・江ノ島電鉄「江ノ島駅」または湘南モノレール「湘南江の島駅」からアクセスできる。島内に入ってからは、仲見世通りを進んだ後に島の西側へと続く路地を目指すことになる。観光マップには載っていないような細い路地を抜けた先にあるため、初めて訪れる場合は少し迷うことがあるかもしれないが、それもまた隠れ家的なスポットを探し当てる楽しさのひとつといえる。
なお、西浦漁港は釣り禁止エリアとなっているため、釣りを目的に訪れる場合は事前に確認が必要だ。散策や景観を楽しむ場所として、マナーを守って利用したい。潮の満ち引きによって楽しめる範囲が変わるため、磯歩きを目的とする場合は訪問前に潮汐情報を確認しておくとより充実した時間を過ごせるだろう。江ノ島観光の定番スポットをひと通り回った後に、ゆったりとした時間を過ごしたい人にこそ訪れてほしい、島の隠れた宝物のような場所だ。
交通
江ノ島駅から徒歩圏内
營業時間
預算