横須賀の港に広がる光景は、日本では他に類を見ない異空間だ。米海軍と海上自衛隊という二つの精強な艦隊が並び立つ横須賀軍港を、専用クルーズ船から間近に眺める「横須賀軍港めぐり」は、軍艦ファンのみならず歴史や安全保障に関心を持つすべての旅行者にとって忘れられない体験となる。
幕末から続く「軍港都市」横須賀の歴史
横須賀が近代日本の礎となる軍港として整備されたのは、幕末から明治初期にかけてのことだ。1865年、フランス人技師レオンス・ヴェルニーの指導のもと横須賀製鉄所(のちの横須賀造船所)が設立され、日本初の本格的な近代造船施設として発展した。明治維新後は大日本帝国海軍の拠点となり、日本海海戦でロシア・バルチック艦隊を破った連合艦隊旗艦「三笠」が建造された地としても知られる。三笠は現在も「記念艦三笠」として三笠公園に保存されており、軍港めぐりの前後に立ち寄る観光客も多い。
第二次世界大戦後、横須賀は米軍に接収され、在日米海軍の最大拠点「横須賀海軍施設(Commander Fleet Activities Yokosuka)」として機能し続けている。現在は太平洋艦隊の中核を担う米海軍第7艦隊の母港であり、原子力空母をはじめとする大型艦艇が常時停泊している。一方、海上自衛隊の横須賀地方隊も同じ港内を拠点とし、護衛艦や潜水艦が並ぶ様子はまさに壮観だ。この「日米共同使用」という他に例のない構造が、横須賀軍港めぐりを唯一無二の観光体験にしている。
クルーズで何が見られるか
横須賀軍港めぐりは、横須賀市の汐入桟橋を発着する約45分間のクルーズだ。運航は「TRYANGLE」が手がけており、1日複数便が運航されている。船は米海軍基地と海上自衛隊横須賀基地の岸壁沿いをゆっくりと周航し、岸壁に係留された艦艇を間近で見学できる。
米海軍側では、原子力空母や巡洋艦、駆逐艦などが並ぶ光景が圧巻だ。空母の巨大さは写真では伝わりにくく、間近で見ると甲板の広さに思わず声を上げてしまうほどである。また、上甲板に並ぶ航空機や、艦橋の複雑な構造物も肉眼でしっかり確認できる。
海上自衛隊側では、護衛艦やイージス艦、潜水艦などを見学できる。潜水艦が水上に停泊している様子を陸から見るのと、海上の船から眺めるのとでは迫力がまるで異なる。アナウンスや配布資料を活用すれば、各艦の艦名や役割も把握しやすく、初心者でも十分楽しめる内容だ。撮影は基本的に自由に行えるが、米軍基地側の撮影については一部制限がある場合もあるため、当日の案内に従ってほしい。
季節ごとの楽しみ方
横須賀軍港めぐりは一年中楽しめるクルーズだが、季節によってその表情は大きく変わる。
春(3〜5月)は気候が穏やかで、クルーズの快適さでは最高の季節だ。三笠公園のソメイヨシノが満開を迎える時期には、桜と軍艦という日本らしい組み合わせの写真が撮れる。ゴールデンウィーク期間は混雑するため、早めの予約がおすすめだ。
夏(6〜8月)は日差しが強く、甲板での見学には帽子と日焼け止めが欠かせない。ただし、晴天時の視界は抜群で、遠くに房総半島や富士山が望めることもある。夜間クルーズが設定される時期もあり、ライトアップされた艦艇の姿は昼とはまた異なる雰囲気を醸し出す。
秋(9〜11月)は空気が澄んでいて眺望が良く、写真撮影には最適なシーズンだ。気温も穏やかで、海風が心地よい。艦艇の姿をくっきりと捉えた写真を撮りたいなら、秋晴れの日を選ぶとよい。
冬(12〜2月)は寒さ対策が必要だが、空気の透明度が高く、晴れた日には富士山を背景に軍艦を収めた絵画のような景色が広がることもある。防寒着を用意した上で訪れる価値は十分ある。
周辺の見どころと合わせて楽しむ
横須賀軍港めぐりを最大限に楽しむなら、周辺の観光スポットと組み合わせたい。
クルーズ乗り場から徒歩圏内にある三笠公園は、戦艦三笠を保存した歴史公園だ。明治時代の実際の戦艦に乗り込んで内部を見学できるという体験は、軍港めぐりと合わせることで近代日本の海軍史への理解が深まる。公園内は整備が行き届いており、芝生の広場でくつろぐことも可能だ。
ヴェルニー公園は横須賀海軍施設に隣接したフランス式庭園で、バラの名所として知られる。特に5月と10月のバラのシーズンは多くの来園者で賑わう。園内からは海上自衛隊の護衛艦を間近に眺めることができ、フォトスポットとしても人気が高い。
横須賀市内には「よこすか海軍カレー」で知られるカレー専門店が多く点在しており、クルーズ後の食事に立ち寄る観光客が多い。横須賀海軍カレーは、明治時代に海軍が栄養食として普及させたカレーをルーツとしており、今や横須賀を代表するご当地グルメとなっている。
アクセス情報
横須賀軍港めぐりの乗船場所は、京急本線・横須賀中央駅から徒歩約10分の汐入桟橋(横須賀市汐入町)だ。JR横須賀線を利用する場合は横須賀駅が最寄りで、駅から徒歩約5分とさらに近い。
クルーズは事前予約が可能で、特に週末や連休は混雑するため、公式サイトからのオンライン予約を利用すると安心だ。料金は大人1,800円程度(料金は変更される場合があるため公式サイトで要確認)。小学生以下の子どもも楽しめる内容で、家族連れでの参加も多い。
駐車場は汐入周辺のコインパーキングを利用することになるが、電車でのアクセスが便利なため、公共交通機関の利用を推奨する。横浜・品川方面からは電車で約1時間以内に到着でき、日帰り観光として無理なく楽しめる距離にある。横須賀は東京からも近く、週末のショートトリップ先として近年注目を集めている港町だ。
交通
神奈川県横須賀市内、最寄り駅またはバス停からアクセス
营业时间
散策自由
预算
無料