
和多都美神社(わたつみじんじゃ)は、長崎県対馬市豊玉町仁位、対馬のリアス式海岸を代表する浅茅湾(あそうわん)の入江に鎮座する古社です。海神(わたつみ)である豊玉彦尊(とよたまひこのみこと)と豊玉姫命(とよたまひめのみこと)を主祭神として祀り、創建は神代にまで遡ると伝えられる、日本でも屈指の歴史を持つ神社です。
最大の特徴は、社殿正面から海に向かって一直線に並ぶ五つの鳥居のうち、二つが海中に立っていることです。満潮時には鳥居の根元が完全に海に沈み、まるで海から神域へと続く参道のように神秘的な光景が広がります。逆に干潮時には鳥居までの参道が現れ、海底を歩いて鳥居をくぐることができます。瀬戸内海の厳島神社に似た佇まいでありながら、対馬という日本最北西端の離島の静寂のなかにあるため、より一層幽玄な雰囲気を漂わせます。
この神社は、日本神話の「山幸彦・海幸彦」物語の舞台ともされ、山幸彦(彦火火出見尊)が兄から借りた釣り針を失い、海神の宮を訪れて豊玉姫と結ばれたという伝説の地。境内には豊玉姫の墓と伝わる御陵や、玉の井と呼ばれる神聖な井戸、磯良恵比寿の磯良えびす石(鱗状の文様を持つ自然石)など、神話と結びついた数多くの史跡が点在しています。
背後に広がる原生林は、コウヤマキやスダジイなど対馬独特の照葉樹に覆われ、亜熱帯と冷温帯の植物が混在する貴重な生態系を形成しています。境内を歩くだけで、神話の世界と原生の自然に同時に包まれる感覚を味わえるでしょう。
対馬は朝鮮半島まで約50kmという地理的位置にあり、古代から大陸と日本列島を結ぶ要衝でした。和多都美神社は、その航海の安全を祈る人々の信仰の中心であり続けてきました。アクセスは博多港から高速船・フェリーで対馬・厳原港または比田勝港へ、そこから車で約1時間。離島ならではの少し遠い旅程ですが、訪れる価値のある神秘の聖地として、近年は国内外から多くの参拝者を集めています。
アクセス
対馬空港から車で約30分、または厳原港から車で約50分
営業時間
境内自由(社務所は9:00〜17:00)
料金目安
参拝無料