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遠見岬神社

遠見岬神社

※写真はイメージです。

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千葉県勝浦市の中心部、雄大な太平洋を望む八幡岬のほとりに鎮座する遠見岬神社は、約二千年の歴史を誇る房総最古の社のひとつです。地域の守り神として古来より人々に崇敬され、歴史・文化・自然が交差する勝浦観光の中心的な存在として、今も多くの参拝者を迎え続けています。

天冨命と忌部氏が紡ぐ、房総開拓の物語

遠見岬神社の御祭神は天冨命(あめのとみのみこと)。初代天皇・神武天皇の御代にまで遡る由緒を持つ神様で、朝廷の祭祀を司る名門氏族・忌部氏(いんべし)に属します。天冨命は神武天皇の命により初代皇居の造営を指揮した後、豊かな土地を求めて阿波国(現在の徳島県)から海を渡り、黒潮に乗って東へと向かいました。

上陸した御一行がまず取り組んだのは、麻や「穀(かじ)」の栽培です。特に麻の育ちがよく、麻の古語「総(ふさ)」にちなんでこの地を「総国」と命名。上総・下総という地名もここに由来しています。また安房の地には祖神・天太玉命を祀る社(現・安房神社)を建立し、四国の阿波国の名をとって「安房」と名付けました。房総半島に阿波国と同じ地名が今も数多く残るのは、こうした歴史的な繋がりによるものです。

安房の開拓を終えた天冨命は関東一円を北上し、農業・養蚕・織物・製紙などの技術を広めながら、最終的に現在の勝浦の地に住まわれました。遠見岬(八幡岬の突端)に居を構え、先住の人々に漁業・農業・建築の技術を伝えたと伝えられています。全国有数の漁港として知られる現在の勝浦漁港は、まさにこの天冨命の御事績にその源流を見ることができます。

天冨命がお隠れになると、後裔の勝占忌部須須立命(かつらいんべすすたつのみこと)が冨貴島に社殿を建立し、開拓の祖神として御神霊をお祀りしました。これが遠見岬神社の創建とされています。また、勝占忌部が住んだことからこの地は「勝占(かつら)」と呼ばれるようになり、やがて「勝浦(かつうら)」へと変化しました。

津波・落城・逃避行——波乱の歴史を刻んだ古社

現存する最古の記録は承和二年(835年)の正殿修理の記述ですが、度重なる津波や火災によって古文書の多くが失われました。それでも都に残る木簡には上総国から鮑が大量に運ばれたという記述があり、勝浦市守谷のこうもり穴遺跡からも三世紀頃の鮑殻が多量に出土しています。宮中の祭祀に用いられた鮑は当時の珍重品であり、勝浦が古代から漁業の重要拠点であったことを物語っています。

戦国時代には八幡岬に勝浦城が築かれ、勝浦正木氏の居城となりました。天正十八年(1590年)の落城の際、城主の息女お万は断崖から白布を垂らして海に降り脱出したという伝説が今に語り継がれており、岬には「お万の像」が建てられています。神社のそばを通り抜けて逃れたお万はのちに家康の側室となり、紀伊徳川家・水戸徳川家の藩祖を産みました。

慶長六年(1601年)の大津波では社殿が流され、御神体も海中へ。しかし御神体は砂浜に打ち上げられ、発見した住民が「大明神、大明神」と叫びながら名主の元まで担いで走ったといいます。御神体を白布で包み麻で縛ったというこの逸話は、今日の秋の例祭にその精神が受け継がれています。明治四年(1871年)には郷社に列せられ、「遠見岬神社」と改称されて現在に至ります。

境内の見どころとご利益

神社正面に構えるのは、急勾配の60段の石段。石段を上りきると、勝浦の港と広大な太平洋を一望できる清々しい眺望が待っています。境内は緑に包まれ、静謐な空気の中に長い歴史の重みが漂います。

御祭神・天冨命のご利益は多岐にわたり、厄除け・縁結び・災難除け・開運祈願などが知られています。また古くから漁業の守護神として崇敬されており、「船霊様(ふなだまさま)」の信仰が今も息づいています。船霊様とは船に宿る神様で、漁や航海の安全を守るとされ、かつては天冨命が伝えた麻で作られていましたが、嘉永五年(1852年)頃に人形の形へと変化しました。

月に一度の「新月祈願祭」も特徴的です。新月は願い事をするのに良い日とされており、この日に合わせて参拝する人も多くいます。厄払いや安産、家内安全など各種のご祈願は電話でも申し込みができます。

60段の石段を彩る、かつうらビッグひな祭り

遠見岬神社が全国的な知名度を高めた最大の要因が、毎年2月下旬から3月にかけて開催される「かつうらビッグひな祭り」です。徳島県勝浦町との友好交流を機に始まったこのイベントでは、市内各所に多数のひな人形が飾られます。

なかでも遠見岬神社の60段の石段に並ぶ約1,200体のひな人形は圧巻のひと言。赤い毛氈の上に整然と並ぶ人形が石段を埋め尽くす光景はSNSでも広く拡散され、今では年間40万人もの観光客を勝浦へと引き寄せる一大イベントとなっています。夕暮れ時のライトアップでは、昼間とはまた異なる幻想的な雰囲気を楽しめます。

朝市と八幡岬——勝浦をまるごと楽しむ

参拝とあわせてぜひ訪れたいのが、日本三大朝市のひとつ「勝浦朝市」です。江戸時代初期に城下の商業振興のために始まったとされる朝市は400年以上の歴史を誇り、地元の農産物・海産物・惣菜などが毎月定期的に並びます。早朝から地元の人々と観光客が交わる活気ある雰囲気は、勝浦ならではの魅力です。

神社から徒歩圏内の八幡岬公園には「お万の像」が建ち、断崖から望む太平洋の眺望は雄大です。岬周辺は磯遊びや釣りのスポットとしても人気があり、家族連れにも喜ばれます。

アクセスはJR外房線「勝浦駅」から徒歩約10分。車の場合は大原ICから国道297号経由で約30分です。温暖な気候の勝浦は年間を通じて参拝しやすく、二千年の歴史が息づく遠見岬神社を起点に、港町の魅力をじっくり味わってみてください。

アクセス

勝浦駅から徒歩でアクセス可能。駐車場10台完備。

営業時間

授与所(おみくじ・お守り・朱印)9:00~17:00、祈祷受付9:00~17:00、定休日なし

料金目安

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