江戸時代、日本橋を起点とする東海道五十三次の第一番目の宿場として栄えた品川宿。東京都心から電車でわずか数分の距離にありながら、この地には今もなお江戸の息吹が確かに残っています。旧東海道沿いを歩けば、かつて旅人たちが行き交ったにぎやかな宿場町の面影を感じることができます。
江戸の玄関口・品川宿の歴史
品川宿は、慶長6年(1601年)に徳川幕府が東海道に宿駅制度を設けた際に整備された、五十三次のうち最初の宿場です。江戸の城下町から南に約4キロメートルの距離に位置し、江戸を出発した旅人が最初に泊まる宿場、あるいは江戸入りを前にした旅人が身支度を整える場所として、常に多くの人々でにぎわいました。
宿場の規模は非常に大きく、本陣2軒、脇本陣2軒のほか、旅籠が93軒を数えたとも伝えられています。また品川宿は、東海道の宿場の中でも特に飯盛女(めしもりおんな)と呼ばれる遊女が多く集まることで知られており、その数は最盛期には1,500人を超えたとも言われています。江戸から近い立地もあって、純粋な旅の宿場というよりも、行楽や遊興の色合いも強い独特の宿場町として発展していきました。
現在の北品川から青物横丁にかけての旧東海道沿いには、往時の宿場の面影を残す建物や石碑が点在しており、歴史の面影を随所に感じながら散策を楽しめます。
品川宿場まつりの見どころ
毎年9月の第3土曜・日曜日に開催される「品川宿場まつり」は、かつての宿場町の賑わいを現代に蘇らせる一大イベントです。2日間にわたって旧東海道沿いの商店街が歩行者天国となり、沿道には露店が立ち並び、地域全体が江戸時代の宿場町へとタイムスリップします。
まつりのハイライトは、なんといっても花魁道中(おいらんどうちゅう)の再現行列です。豪華絢爛な着物をまとい、高い下駄を履いてゆったりと独特の歩き方(外八文字)で練り歩く花魁と、お付きの禿(かむろ)や男衆が連なる行列は、見る者を江戸の世界へと引き込みます。年に一度のこの光景を一目見ようと、まつりの期間中は多くの観光客が品川に集まります。
花魁道中のほかにも、武者行列や神輿(みこし)の担ぎ出し、よさこいソーランなどの演舞が繰り広げられ、地元の人々と観光客が一体となって祭りを楽しめます。地域の子どもたちが参加する稚児行列も微笑ましく、家族連れにも人気です。会場では地元の飲食店や商店が出店を出し、昔ながらの味から現代的なグルメまで、食べ歩きを楽しめるのも魅力の一つです。
旧東海道沿いの歴史散策コース
品川宿場まつりの時期以外でも、旧東海道沿いの歴史散策は一年を通じて楽しめます。北品川駅を起点に青物横丁駅までの約2キロメートルのコースは、徒歩でゆっくりと歩いても1〜2時間ほどで回れる手頃な散策ルートです。
コースの中でも特に注目したいのが、旧東海道沿いに建つ荏原神社(えばらじんじゃ)と品川神社の2つの古社です。荏原神社は、和銅2年(709年)に創建されたと伝えられる歴史ある神社で、品川の総鎮守として地域の人々に親しまれてきました。境内には品川宿に関連する石碑や資料が残り、宿場町の歴史を伝えています。品川神社は、文治3年(1187年)に源頼朝が安房国(現在の千葉県)の洲崎明神を勧請したのが始まりとされ、品川区内最古の神社の一つです。石段を上った先に広がる境内からは、品川の街並みを見渡すことができます。
商店街には、昔ながらの惣菜屋や和菓子屋、豆腐店などが今も商売を続けており、旅の途中で気軽に立ち寄って買い食いを楽しめます。特に地元で長年愛されてきた惣菜や揚げ物は、散策の合間の小腹満たしに最適です。街道沿いに設置されている「品川宿歴史案内板」を丁寧に読みながら進むと、平凡に見える街角にも、かつての旅籠の跡地や史跡が隠れていることに気づかされます。
季節ごとの楽しみ方
**春(3月〜5月)**:北品川周辺の目黒川沿いは、桜の名所として知られています。旧東海道散策と目黒川の花見を組み合わせれば、江戸の歴史と日本の春の美しさを一度に満喫できます。散策しやすい気候でもあり、ゆっくりと史跡めぐりをするには絶好の季節です。
**夏(6月〜8月)**:夏の夜には品川神社などで夏越しの祓いや例大祭が行われ、境内に提灯が灯る幻想的な雰囲気を楽しめます。暑い時期は早朝や夕方の涼しい時間帯に散策するのがおすすめです。
**秋(9月〜11月)**:9月の品川宿場まつりはもちろん、秋の澄んだ空気の中での歴史散策も格別です。木々が色づく季節には、神社の境内がより美しく趣深い雰囲気になります。
**冬(12月〜2月)**:冬は観光客が比較的少なく、じっくりと史跡を巡るには穴場の季節です。品川神社の初詣は毎年多くの参拝者でにぎわい、元日から三が日にかけては境内が特ににぎわいます。
周辺のおすすめスポット
旧東海道散策と合わせて訪れたいスポットが周辺に点在しています。品川宿本陣跡の近くには「品川区立品川歴史館」があり、品川の歴史と文化を詳しく学ぶことができます。江戸時代の品川宿に関する資料や展示が充実しており、散策の前後に立ち寄ると、街歩きがより深いものになります。
また、旧東海道から少し足を延ばせば、寄木細工の技術を活かした「品川硝子工芸」など、伝統工芸の店舗も点在しています。東京湾に近い品川らしく、新鮮な魚介類を使った海鮮料理の名店も多く、散策後のランチやディナーにも困りません。
アクセスと基本情報
品川宿場まつりの会場となる旧東海道へのアクセスは、京浜急行本線「北品川駅」が最寄りです。JR品川駅からも歩いて約10分ほどで北品川駅方面に到着でき、散策の起点となります。青物横丁まで歩いたあとは、そのまま京浜急行「青物横丁駅」から帰ることができるため、一方通行で無理なく歩けるのが嬉しいポイントです。
品川宿場まつりの開催日時や詳細は、品川区観光協会や主催団体の公式サイトで事前に確認することをおすすめします。まつりの期間中は会場周辺が大変混雑するため、公共交通機関での来場が望まれます。旧東海道散策そのものは入場料や特別な手続きなく楽しめ、気軽に立ち寄れるのも大きな魅力です。東京の下町情緒と江戸の歴史が交差する品川宿へ、ぜひ一度足を運んでみてください。
アクセス
京急北品川駅から徒歩すぐ
営業時間
散策自由(宿場まつりは9月下旬)
料金目安
無料