日光の豊かな自然と歴史遺産に囲まれた栃木県日光市に、まるで世界を凝縮したような夢のテーマパークがある。東武ワールドスクウェアは、世界21カ国・102の名建築を25分の1スケールで精巧に再現した、唯一無二のミニチュアパークだ。一歩足を踏み入れれば、ヨーロッパの宮殿からアジアの古刹まで、時間も距離も超えた「世界一周」が始まる。
25分の1の世界が生まれるまで
東武ワールドスクウェアが開業したのは1993年のこと。東武鉄道グループが日光観光の新たな魅力として整備し、以来30年以上にわたり国内外の観光客を魅了し続けている。パーク内に並ぶミニチュア建築は、単なる模型ではない。各建造物を制作するにあたっては、専門のスタッフが実際に現地を訪れ、細部にいたるまで徹底的に調査・取材を行ったという。石材の質感、窓の形状、装飾の配置――いずれも現地の建物に忠実であることが最優先されており、その製作精度は世界的にも高い評価を得ている。
建造物の素材にも並々ならぬこだわりが注ぎ込まれており、風化や劣化に耐える特殊な素材と塗料が使用されている。屋外に展示されているにもかかわらず、長年にわたって精度と美しさを保ち続けているのは、こうした地道な技術の積み重ねによるものだ。訪れるたびに新たな発見があるほど、細部の作り込みは圧倒的である。
世界の名建築を一日で「旅する」
パーク内は「日本ゾーン」「アジアゾーン」「エジプトゾーン」「ヨーロッパゾーン」「アメリカゾーン」の5つのエリアに分かれており、歩きながら自然と世界一周の旅ができる構成になっている。
エジプトゾーンでは、ギザの三大ピラミッドとスフィンクスが砂漠の情景ごと再現されており、スケールの大きさに思わず息をのむ。ヨーロッパゾーンに踏み込めば、フランスのエッフェル塔やヴェルサイユ宮殿、イタリアのコロッセオ、イギリスのビッグベンやバッキンガム宮殿といった名建築が次々と現れる。実際にヨーロッパを旅するよりもずっと短い時間で、各国を代表する建造物をまとめて鑑賞できるのは、ここならではの体験だ。
アジアゾーンでは、中国の万里の長城や北京の故宮(紫禁城)、インドのタージ・マハルなどが並ぶ。日本ゾーンには、地元日光を代表する日光東照宮をはじめ、姫路城、厳島神社、清水寺など、日本各地の世界遺産・国宝級の建造物が集結している。日本人でも「いつかは行ってみたい」と思いながら、なかなか足を運べない名所を一か所で眺められるのは、改めて日本の文化遺産の豊かさを実感させてくれる。
約14万体の人形が語るリアルな日常
東武ワールドスクウェアの最大の魅力のひとつが、建造物の周囲に配置された約14万体の人形たちだ。観光客、警備員、労働者、子どもたち――それぞれが精巧に作られており、建造物のスケールに合わせた1センチ前後の小さな人形が、生き生きとした日常のシーンを演出している。
ルーヴル美術館の前では観光客の列が続き、万里の長城には兵士が立ち、コロッセオでは闘技の場面が再現されている。一見すると気づかないような隅のほうに、ユーモラスなシーンが隠れていることもある。パーク内をゆっくりと歩き、人形たちの細かなポーズや表情に目を向けるうちに、まるで本物の街の中を歩いているような錯覚に陥る。
この「発見する楽しさ」こそ、東武ワールドスクウェアが子どもから大人まで幅広い層に愛され続ける理由のひとつだ。ファインダー越しに巨人になった気分で写真を撮ったり、建物と人形を組み合わせた構図を探したりと、カメラやスマートフォンを手にした訪問者が思い思いの角度でシャッターを切る姿が絶えない。
季節ごとに表情を変えるパークの魅力
東武ワールドスクウェアは四季を通じて楽しめるが、季節によって全く異なる表情を見せる点も大きな魅力だ。
春には、パーク内に植えられた桜や花々が咲き誇り、ミニチュア建築と満開の花のコントラストが美しい風景を作り出す。日光市内の春は東京よりやや遅く、4月下旬から5月上旬にかけて見頃を迎えることが多い。ゴールデンウィークの時期は特ににぎわいを見せる。
夏は緑が鮮やかに映え、日光の涼しい気候の中でゆったりと散策できる。東京や仙台など都市部の暑さを逃れ、避暑を兼ねた日光観光のコースとして人気が高い。
秋は日光随一の紅葉シーズンと重なり、色づいた木々を背景にミニチュア建築を眺めると、幻想的な雰囲気が漂う。特に10月下旬から11月中旬にかけての紅葉ピーク時は、パーク内の景観も一段と映える。
冬にはイルミネーションイベントが開催され、昼間とは全く異なる夜の顔を楽しめる時期もある。光に照らされたミニチュア建築は昼間とは別の美しさを放ち、寒い季節ならではの幻想的な雰囲気に包まれる。
アクセスと周辺観光情報
東武ワールドスクウェアへのアクセスは、東武日光線「東武ワールドスクウェア駅」が最寄り駅で、駅からは徒歩すぐという好立地にある。東武スカイツリーライン・日光線を利用すれば、浅草駅から特急で約1時間50分ほど。日光へのアクセスはJR日光線もあり、JR日光駅からバスを利用する方法もある。
日光市内には東武ワールドスクウェアのほかにも魅力的な観光スポットが充実している。世界遺産に登録されている日光東照宮・輪王寺・二荒山神社の「二社一寺」は、国内屈指の歴史的・文化的名所だ。また、「いろは坂」を登った先に広がる奥日光エリアには、中禅寺湖や華厳ノ滝など雄大な自然景観が待つ。温泉もあり、日帰り入浴施設や温泉旅館も充実している。
東武ワールドスクウェアを起点に、世界遺産の社寺を訪れ、奥日光の自然に触れるという一泊二日の旅程は、日光観光の王道コースとして多くの旅行者に選ばれている。首都圏から日帰りでも十分楽しめる距離にあることから、週末旅行の目的地としても最適だ。
世界遺産の地で楽しむ、もうひとつの「世界旅行」
日光という土地が持つ歴史と文化の重みの中に、世界中の名建築を集めたパークが存在するのは、ある意味で必然ともいえる。東武ワールドスクウェアを訪れた人の多くが口にするのは、「実際に各国を旅したくなった」という言葉だ。精巧なミニチュアを通じて世界の文化に触れ、いつか本物を見に行きたいという好奇心と旅心を刺激してくれる場所――それが東武ワールドスクウェアの真価だろう。家族連れ、カップル、友人同士、そして一人旅の旅行者まで、誰もが自分だけの「世界一周」を楽しめるこのパークは、日光観光に欠かせない名所として、これからも多くの人を迎え続けるに違いない。
アクセス
東武鬼怒川線小佐越駅から徒歩8分
営業時間
9:30〜17:00(季節変動あり)
料金目安
2,800円(入場料)