奈良公園は、古都奈良の象徴ともいえる広大な公園です。約502ヘクタールの敷地に世界遺産の社寺が点在し、国の天然記念物に指定された野生の鹿が人々と共存するこの場所は、国内外から年間1,000万人以上もの観光客が訪れる日本屈指の観光地です。
奈良公園の歴史と成り立ち
奈良公園が正式に開設されたのは1880年(明治13年)のことです。もともとこの地域には奈良時代(710〜794年)から東大寺や春日大社、興福寺といった国家鎮護の大寺社が建ち並んでいました。明治維新後、旧社寺の境内地や官有地を整備・統合して現在の公園の形となりました。
公園内に暮らす鹿は、古来より春日大社の神使(みつかい)として崇められてきた存在です。奈良時代には鹿を傷つけることは死罪に処されるほど厳しく保護されており、その精神は現代にも受け継がれています。第二次世界大戦中には食糧難から頭数が激減しましたが、戦後に保護活動が再開され、現在は約1,200頭にまで回復しています。1957年には国の天然記念物に指定され、奈良の鹿愛護会によって日々の健康管理や保護活動が行われています。
鹿との触れ合い体験
奈良公園を訪れた人が最初に驚くのは、鹿の人慣れぶりです。観光客に近づいて来る鹿たちは、公園内各所で販売されている「鹿せんべい」(1束150〜200円程度)を目当てにしていることがほとんど。差し出すとおとなしく受け取ってくれるため、子どもから大人まで気軽に触れ合いを楽しめます。
ただし、鹿はあくまで野生動物です。せんべいを持っているとわかると複数頭に囲まれることもあり、服を引っ張られたり突進されたりすることもあります。特に春(3〜4月)は雄鹿が角を持つ季節、秋(9〜11月)は発情期にあたるため、必要以上に近づきすぎないよう注意が必要です。人間の食べ物は鹿にとって有害なため、絶対に与えないようにしましょう。
鹿が「お辞儀」を返してくれる「鹿のお辞儀」と呼ばれる行動は有名で、せんべいを持ちながらお辞儀をすると、鹿もお辞儀を返してくれることがあります。こうした自然との対話は、奈良公園ならではの唯一無二の体験です。
世界遺産の社寺めぐり
奈良公園の魅力は鹿だけではありません。公園内およびその周辺には「古都奈良の文化財」として1998年にユネスコ世界遺産に登録された複数の社寺が集まっています。
**東大寺**は、奈良時代の聖武天皇によって建立された日本最大の木造建築「大仏殿」を擁します。堂内に鎮座する奈良の大仏(盧舎那仏像)は高さ約15メートル、重さ約250トンにも及ぶ青銅製の坐像で、圧倒的な存在感を放ちます。大仏殿の柱には大仏の鼻の穴と同じ大きさとされる穴があり、くぐり抜けると無病息災の御利益があるという言い伝えは、子どもたちに特に人気です。
**春日大社**は768年の創建とされる全国約1,000社の春日神社の総本社。朱塗りの回廊と約3,000基に及ぶ燈籠が幻想的な雰囲気を醸し出しています。特に毎年2月と8月の節分万燈籠では、すべての燈籠に火が灯され、幽玄の世界が広がります。
**興福寺**は藤原氏の氏寺として栄えた名刹で、五重塔は東大寺の南大門付近から望める奈良を代表する風景のひとつ。国宝館には阿修羅像をはじめとする天平彫刻の傑作が収蔵されており、美術・歴史ファンには見逃せないスポットです。
季節ごとの見どころ
奈良公園は一年を通じて異なる表情を見せます。
**春(3〜4月)** は約1,700本のソメイヨシノや山桜が咲き誇る花見の季節。若草山の山麓から東大寺の転害門付近にかけて桜並木が続き、鹿と桜を同時に楽しめるという贅沢な光景が広がります。
**夏(7〜8月)** は青々とした木々の緑が目に鮮やか。若草山では芝生が生い茂り、夕涼みを楽しむ地元の人々の姿も見られます。8月15日の「奈良大文字送り火」も風物詩のひとつです。
**秋(10〜11月)** は紅葉と鹿の組み合わせが格別です。浮雲園地周辺や春日大社参道、東大寺の境内などで美しい紅葉を観賞できます。また、秋は雄鹿の角切りの季節。江戸時代から続く伝統行事「鹿の角きり」が春日大社境内の鹿苑で行われ、迫力ある光景を見学できます。
**冬(12〜2月)** は観光客が比較的少なく、静寂の中で社寺の荘厳な雰囲気を味わえます。雪化粧した東大寺や春日大社の燈籠は格別の美しさ。2月の節分万燈籠は寒さの中でも多くの参拝者が訪れる冬の風物詩です。
アクセスと周辺情報
奈良公園へのアクセスは鉄道が便利です。近畿日本鉄道(近鉄)奈良線の**近鉄奈良駅**、またはJR大和路線の**JR奈良駅**が最寄り駅となります。近鉄奈良駅から公園入口まで徒歩約5分、JR奈良駅からは徒歩約15〜20分が目安です。大阪・難波からは近鉄特急を利用すると約35分とアクセスが良好です。
公園内は非常に広大なため、全体をくまなく回るには半日から1日かかります。東大寺・興福寺エリア、春日大社エリア、若草山エリアとルートを絞って回るのが効率的です。春日大社境内では周遊のための「あおによし」バスも運行されています。
周辺には奈良町(ならまち)と呼ばれる江戸時代の町家が残る古い街並みがあり、カフェや雑貨店、奈良漬・柿の葉寿司などの土産物店が軒を連ねています。奈良公園の散策と合わせて、ならまちの散歩も合わせて楽しむのがおすすめです。
入園は無料(社寺の拝観には別途入場料が必要)で、年中無休でいつでも訪れることができます。奈良観光の中心として、歴史・自然・文化が凝縮された奈良公園は、一度訪れると何度でも足を運びたくなる奥深い場所です。
アクセス
近鉄奈良駅から徒歩約5分
営業時間
常時開放
料金目安
無料