伊豆半島の東海岸、熱川温泉の地に、日本でここだけしか体験できないユニークな世界が広がっています。温泉の蒸気がたなびく中でワニが泳ぎ、南国のバナナが実る「熱川バナナワニ園」。訪れた人が思わず「なんでここに?」と笑顔になる、伊豆が誇る個性派スポットです。
温泉とともに生まれた、ユニークな動植物園
熱川バナナワニ園が誕生したのは1958年のこと。熱川温泉は古くから湯量豊富な温泉地として知られており、源泉の温度は100度近くに達することもあります。この豊富な地熱を活かして何かできないか——そんな発想から、熱帯植物の栽培とワニの飼育を組み合わせた施設が生まれました。
温泉の蒸気と熱を利用すれば、静岡の気候でも南国の動植物を育てられる。その逆転の発想が、半世紀以上にわたって多くの観光客を魅了する施設の礎となりました。開園当初は物珍しさから全国的な注目を集め、高度経済成長期の観光ブームにも乗って伊豆を代表する観光地の一つとなりました。現在は本園と分園に分かれており、それぞれ異なる魅力を持っています。
ワニの王国へようこそ
熱川バナナワニ園の名物といえば、何といってもワニの飼育展示です。世界各地から集められた約20種類、100頭以上のワニが園内で飼育されており、その規模は国内屈指を誇ります。
本園のワニ池では、大型のナイルワニやイリエワニをはじめ、さまざまな種類のワニが間近で観察できます。ガラス越しではなく、手すり越しにワニの姿を間近に眺められる展示スタイルが特徴的で、その迫力に思わず息をのむ来場者も少なくありません。体長4〜5メートルに達する大型個体が水面近くに浮かぶ様子は、まさに圧巻の一言。
冬の寒い時期でも、温泉の熱がワニ池に引かれているため水温は一定に保たれており、ワニたちは年間を通じて活発な姿を見せてくれます。これもこの施設ならではの特徴で、真冬でも元気なワニを観察できるのは全国的にも珍しい体験です。飼育員によるガイドや解説が行われる時間帯もあり、ワニの生態について詳しく学ぶことができます。
温泉バナナと熱帯植物の楽園
「バナナ」の名を冠するだけあって、園内の温室植物展示も大きな見どころです。温泉熱を利用した温室では、バナナをはじめ、パパイヤ、マンゴー、パッションフルーツなど、さまざまな熱帯フルーツが栽培されています。
特に人気なのが「温泉バナナ」の試食コーナー。温泉の熱で育てたバナナは、市販のものとは一味異なると評判で、甘みが強くもちっとした食感が特徴とも言われています。試食コーナーでは、その場で味わえるとあって、子どもから大人まで長い列ができることもしばしば。「伊豆でバナナを食べた」という体験は、旅の思い出として長く残ることでしょう。
温室内には、バナナの木が実をつけている様子も観察でき、普段はなかなか見る機会のない「バナナの実のなり方」を学べる絶好の場所でもあります。大きな房状に垂れ下がるバナナの姿は、見た目にも迫力満点。植物好きの方はもちろん、子どもたちの食育の場としても人気が高く、学校の校外学習で訪れるグループも多く見られます。
レッサーパンダをはじめ、個性豊かな動物たち
ワニと植物だけにとどまらないのが熱川バナナワニ園の魅力です。分園ではレッサーパンダが飼育されており、その愛らしい姿は子どもたちに大人気。運が良ければ、餌やり体験ができる時間帯に出会えることもあります。
また、マナティーの展示も大きな注目ポイントです。国内でマナティーを見られる施設は非常に限られており、熱川バナナワニ園はその貴重な展示施設の一つ。のんびりと水中を漂う大型の草食海獣の姿は、見る者をほっこりとした気持ちにさせてくれます。
さらにカピバラ、フラミンゴ、各種爬虫類など、多彩な動物との出会いが園内に散りばめられています。ワニ・バナナというインパクトある目玉に加え、じっくり回ると意外なほど見どころが多く、ゆっくり過ごせば半日は楽しめる充実ぶりです。
季節ごとの楽しみ方
熱川バナナワニ園は、年間を通じて訪れる価値があるスポットです。
春(3〜5月)は観光シーズンの始まり。温暖な伊豆の気候の中、温室の熱帯植物が生き生きと育つ様子を楽しめます。ゴールデンウィーク期間は特ににぎわい、家族連れで園内が活気づきます。
夏(6〜8月)は子どもたちの夏休みと重なり、最もにぎやかな季節。ワニの活動も活発になる時期で、力強い姿を観察するチャンスが増えます。熱川温泉の海水浴場も近くにあるため、海と動物園を組み合わせた一日も過ごせます。
秋(9〜11月)は観光客がやや落ち着き、ゆっくりと園内を巡るのに最適な季節です。空気が澄んで、海沿いの景色も美しい時期。
冬(12〜2月)は特に個性が光ります。温泉熱のおかげでワニも植物も元気いっぱい。寒い季節に温かな温室でバナナを試食するという、ちょっと不思議な体験は冬ならではの楽しみです。伊豆は温泉地でもあるため、宿泊を組み合わせたゆったりとした旅のプランにもよく合います。
アクセスと周辺観光情報
熱川バナナワニ園へのアクセスは、電車利用が便利です。伊豆急行線「伊豆熱川駅」から徒歩約5分というアクセスの良さも魅力の一つ。東京・新宿方面からは特急「踊り子」を利用すれば、乗り換えなしで向かうことができます。車の場合は東名高速から沼津ICを経由し、国道135号線を南下します。園内に駐車場も整備されています。
周辺には熱川温泉の旅館・ホテルが点在しており、日帰り入浴を楽しめる宿も多数あります。バナナワニ園の見学後に温泉でゆっくりするコースは、多くの旅行者に支持される定番プランです。また、近隣の伊東や下田など伊豆各地の観光地と組み合わせたドライブルートも人気。河津桜で知られる河津町も比較的近く、春の桜シーズンには一帯が多くの観光客でにぎわいます。
個性あふれる熱川バナナワニ園は、「知る人ぞ知る」から「行ってよかった」へと変わる、伊豆の隠れた名所。家族旅行はもちろん、ちょっと変わったスポットを求めるカップルや友人同士の旅にもおすすめです。
アクセス
伊豆急「伊豆熱川」駅から徒歩1分
営業時間
8:30〜17:00
料金目安
大人1,800円、子ども900円