琵琶湖の北岸に位置する長浜市は、豊臣秀吉が初めて城持ち大名となった城下町として知られる歴史の町。その中心部に息づく黒壁スクエアは、明治の遺産をガラスアートで再生した、全国でも珍しいまちづくりの成功例として多くの旅人を惹きつけています。
ガラスの街が生まれるまで――黒壁スクエアの歴史
黒壁スクエアのシンボルである「黒壁一號館」は、明治33年(1900年)に第百三十国立銀行の長浜支店として建てられました。黒漆喰塗りの重厚な外壁が「黒壁銀行」という愛称で地元に親しまれ、長浜のランドマークとして長く市民の記憶に刻まれてきました。
しかし昭和後期になると、モータリゼーションの波や郊外型商業施設の台頭によって中心市街地の空洞化が深刻化。この黒壁銀行も取り壊しの危機に瀕します。そこで立ち上がったのが地域の経営者たちです。1988年に官民一体の協議が始まり、翌1989年に株式会社黒壁が設立されました。
黒壁銀行をガラスアートの拠点として活用するという発想は、当時としては大胆なものでした。しかしこの試みは見事に成功し、周辺の古い商家や蔵もリノベーションしながら、ガラス工房・ギャラリー・雑貨店・カフェが集まるエリアへと変貌を遂げました。現在では30棟以上の施設が立ち並び、年間100万人以上が訪れる滋賀県を代表する観光スポットに成長しています。
黒壁スクエアの見どころ――ガラスアートの世界へ
エリアの中核を担う黒壁一號館(黒壁ガラス館)は、国内外のガラス作家によるアート作品や、色鮮やかなステンドグラスパネル、繊細なガラス食器などが所狭しと並ぶショップ兼ギャラリーです。天井から壁面まで展示品で満たされた空間は、まるでガラスの宝箱に迷い込んだような感覚を覚えます。
すぐそばの黒壁三號館では、ガラス細工の制作体験が人気を集めています。熟練のスタッフの指導のもと、サンドブラストやとんぼ玉づくりなどを体験できます。自分だけの作品を持ち帰れる体験型コンテンツは子どもから大人まで幅広く楽しめ、旅の忘れられない思い出になるでしょう。
周辺には骨董品店や和雑貨店、地元食材を使ったカフェやレストランも点在しており、ぶらぶら歩くだけでも発見が尽きません。石畳の小路に並ぶ黒壁の建物群は、どこを切り取っても絵になる風景で、写真撮影を楽しむ観光客の姿が常に絶えません。
秀吉ゆかりの城下町を歩く
黒壁スクエアの楽しみはガラスアートだけではありません。長浜は天正元年(1573年)、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が浅井長政の旧領を拝領し、北近江の拠点として長浜城を築いた地です。城下町の基盤をつくった秀吉の影響は、現代の町並みにも色濃く残っています。
黒壁スクエアから徒歩圏内には、豊公園内に復元された長浜城歴史博物館があり、秀吉と長浜の歴史を詳しく学べます。最上階の展望台からは琵琶湖の雄大な景色が一望でき、北近江の地形を体感することができます。
また、近くには秀吉と石田三成の出会いの逸話で知られる観音寺(三成が茶を三服ふるまったとされる寺)や、豊国神社なども点在しています。歴史散策とガラスアート観光を組み合わせることで、長浜の奥深い魅力をより立体的に味わえます。
四季折々の表情――季節ごとの楽しみ方
長浜の魅力は一年を通じて変化します。春(3〜4月)は、豊公園に咲き誇る桜が有名で、琵琶湖を背景にした花見スポットとして多くの人が訪れます。黒壁スクエアのカフェでお茶をしながら、春の陽気の中を散策するのは格別の贅沢です。
夏(7〜8月)になると、長浜港周辺の琵琶湖岸では花火大会や湖水浴を楽しめます。夕暮れ時の黒壁スクエアは、日中とは異なるムードが漂い、ライトアップされたガラス作品が幻想的な光を放ちます。
秋(10〜11月)は紅葉シーズン。近隣の己高山や渡岸寺観音堂周辺の紅葉とセットで訪れるのがおすすめです。また、10月には長浜曳山まつりに関連したイベントが行われることもあり、伝統文化に触れる機会にも恵まれます。
冬(12〜2月)には、長浜盆梅展(慶雲館)が開催されます。江戸時代から続くこの盆梅展は、数百鉢の老梅が館内を埋め尽くす圧巻の展示で、全国の盆栽愛好家や観光客が足を運ぶ冬の風物詩です。黒壁スクエアのレトロな建物群も、冬の静けさの中でひと味違った趣を見せます。
アクセスと周辺情報
黒壁スクエアへのアクセスは非常に便利です。JR琵琶湖線(北陸本線)の長浜駅から徒歩約5分とほぼ駅直結。大阪・京都からは新快速を利用すれば、大阪駅から約80分、京都駅から約50分で到着します。名古屋方面からはJR米原駅で乗り換えて約20分とアクセス良好です。
駐車場は周辺に複数の市営・民営駐車場があり、マイカーでの訪問も問題ありません。エリア内は徒歩で十分に回れる規模のため、観光に特別な移動手段は必要ありません。
周辺には琵琶湖汽船の竹生島クルーズ(長浜港発)や、近江牛を味わえる飲食店、地酒の試飲ができる蔵元なども揃っています。1日かけてゆっくり長浜を巡るプランが充実しており、琵琶湖観光の起点としても最適な立地です。宿泊施設も駅周辺に充実しているため、一泊してじっくり滞在するのもおすすめです。
アクセス
JR長浜駅から徒歩5分
営業時間
10:00〜18:00(店舗により異なる)
料金目安
入場無料(体験は別途)