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東京・谷中。寺と路地が織りなす古い街並みが今も息づくこのまちに、ホテルとも旅館とも違う新しい宿泊体験が生まれた。その名は「hanare(ハナレ)」。まち全体を一つの大きなホテルに見立てるという、ほかにはない発想が宿の根幹にある。

まちがホテルになる——hanareのコンセプト

hanareが体現するのは「まちをホテルに見立てる」という、シンプルで大胆なアイデアだ。一般的なホテルであればフロント、レストラン、大浴場などの機能が一棟に集約されているが、hanareはそれを谷中のまち全体に分散させた。

チェックインを行うフロントは、建築家の宮崎晃吉氏が手がけたカフェ・ギャラリー「HAGISO(ハギソー)」。もともとは老朽化で取り壊される予定だった木造アパートを、アーティストたちが自ら改修してよみがえらせた建物だ。1階にはカフェとギャラリースペースがあり、展示やイベントが開かれることもある。チェックインの手続きを終えたら、スタッフが客室まで案内してくれる。

食事もHAGISOのカフェダイニングで提供される。朝食は地元の食材を使ったシンプルで温かい献立で、谷中の朝をゆっくりと味わえる。入浴は近所の銭湯を利用する。谷中には歴史ある銭湯が今も残っており、地元の人々と同じ湯船につかる時間は、ここでしかできない体験だ。まちのインフラをそのまま使いながら、旅人がまちの一員として溶け込んでいく——それがhanareの滞在の本質である。

客室——路地に溶け込む古民家の空間

hanareの客室は、谷中の路地に静かに立つ築数十年の建物をリノベーションしたものだ。古い木の梁や柱の質感を残しつつ、清潔感と落ち着きのある空間に仕上げられている。客室の数は多くなく、それぞれ異なる間取りや雰囲気を持つため、同じ「hanare」でも泊まるたびに異なる表情に出会える。

室内には必要最小限のしつらえが整えられており、過剰な設備や装飾を排したシンプルな空間が、まちとの調和を大切にするhanareの姿勢を体現している。寝具は清潔で快適なものが用意されており、旅の疲れをしっかりと癒せる。Wi-Fiも備わっているため、ワーケーション利用にも対応できる。

客室のすぐ外は谷中の路地。窓を開けると、植木鉢が並ぶ軒先や石畳の小道、遠くから聞こえる寺の鐘の音——東京にいながら、時の流れがゆっくりと感じられる環境だ。都会の喧騒を離れた静かな夜が、ここでは当たり前のように用意されている。

谷中という街を歩く

hanareに泊まることは、谷中というまちそのものを体験することでもある。谷中は関東大震災や戦禍を免れたエリアとして知られ、江戸時代から続く寺院が70以上も集まる「寺町」の面影を今に残している。路地を歩けば、猫が昼寝する縁石、昔ながらの豆腐屋、下町の雰囲気をまとった商店が並ぶ風景に出会える。

観光の中心となるのが「谷中銀座商店街」だ。約170メートルの短い商店街だが、コロッケ屋、和菓子店、精肉店、手ぬぐい専門店など個性豊かな店が軒を連ね、地元客と観光客が入り混じって活気にあふれる。夕方には揚げたてのコロッケを片手に散歩する人の姿が絶えない。

また、「谷中霊園」は春に桜の名所として知られ、歴史上の著名人の墓が多く眠る文化的な場所でもある。近隣の「根津神社」はつつじまつりで有名で、4月から5月にかけて約3,000株のつつじが境内を彩る。「上野恩賜公園」や「国立西洋美術館」も徒歩圏内にあり、文化・芸術のスポットへのアクセスも抜群だ。

谷中、根津、千駄木の三地区をつなぐ「谷根千」エリアには、古書店やギャラリー、こだわりの雑貨店などが点在し、半日から一日かけて歩くだけで十分な旅になる。hanareはそのまちなかに位置するため、散策の拠点として申し分ない。

アクセス——都内主要エリアからの交通

hanareへのアクセスは、JR・京成線「日暮里駅」が最寄りで、駅から徒歩数分の距離にある。日暮里駅にはJR山手線・常磐線・京浜東北線が停車するほか、京成本線や京成スカイライナーも利用できる。

成田空港からはスカイライナーで最短41分と、海外からの旅行者にとっても利便性が高い。羽田空港からも、京急線と山手線を乗り継いで約60分ほどでアクセスできる。東京駅・新宿駅・渋谷駅などの主要ターミナルからはいずれも山手線経由で30〜40分程度だ。都心の喧騒から少し距離を置いたロケーションでありながら、どこへ出かけるにも便利な立地といえる。

谷中の路地は車が入りにくい構造になっており、周辺の駐車場も限られているため、公共交通機関での来訪が推奨される。

こんな旅に向いている

hanareが最も輝くのは、「ただ泊まるだけ」ではなく、旅先のまちと深くつながりたいと思う人の旅だ。団体ツアーでは素通りしてしまうような路地裏の景色や、地元の人との何気ない会話、銭湯での偶然の出会い——そんな偶発的な体験が、hanareの宿泊には自然と組み込まれている。

東京にいながら、昭和の風情と現代のクリエイティブが混在するまちに「住む」ように泊まれる場所は、ほかにそうそうない。一人旅や二人旅はもちろん、日本の下町文化に関心を持つ外国人旅行者にとっても、得がたい体験の場となるだろう。ビジネスホテルの効率性でもなく、高級旅館の贅沢でもない。hanareが提供するのは、まちとの暮らしに少しだけ交じる時間だ。谷中という物語の中に、一晩だけ迷い込んでみてほしい。

アクセス

日暮里駅, 千駄木駅より各徒歩約5分

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