御手洗(みたらい)は、広島県呉市豊町、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島の東端に位置する歴史ある港町です。江戸時代、瀬戸内海航路の「潮待ち・風待ちの港」として栄え、北前船や朝鮮通信使、参勤交代の大名たち、果てはシーボルトといった外国人までもが立ち寄った国際色豊かな港でした。1994年(平成6年)には、その町並みがほぼ完全な形で残されていることが評価され、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。
町に足を踏み入れると、江戸から明治・大正・昭和初期にかけて建てられた商家、廻船問屋、料亭、洋館、神社仏閣が、わずか数百メートル四方の中に密集して並び、まるで時代劇のセットの中に迷い込んだような感覚を味わえます。代表的な建物に、日本最古級の洋式時計台を擁する「乙女座」(昭和初期の劇場)、北前船の船主が建てた豪壮な「江戸みなとまち展示館」、廻船問屋「若胡子屋跡」、潮待ちの茶屋として栄えた「越智醫院」(旧脇坂屋)などがあります。
また、御手洗には「お茶屋」と呼ばれる遊郭があり、最盛期には100人を超える女性たちが働いていたといわれます。彼女たちにまつわる切ない物語や、坂本龍馬・吉田松陰・伊藤博文ら幕末の志士たちが立ち寄ったエピソードなど、歴史好きにはたまらない物語の宝庫。狭い路地、石畳、古い井戸、千砂子波止と呼ばれる石積みの防波堤、海沿いの石灯籠など、ディテールの一つひとつが往時の面影を伝えます。
大崎下島は本土から「とびしま海道」と呼ばれる連続する橋でつながっており、車やレンタサイクルで瀬戸内の島々を渡りながらアクセスできます。瀬戸内海の穏やかな多島美と、奇跡的に保存された江戸の港町風情。ノスタルジックな散策と歴史ロマンを求める旅人にとって、瀬戸内屈指の隠れた名所です。
アクセス
JR広駅から「とびしまライナー」バスで約75分「御手洗港」下車すぐ
営業時間
町並み散策自由(各施設は9:00〜17:00目安)
料金目安
散策無料(一部施設は¥200〜¥500)