
池田絣工房
GALLERY
福岡県南部を流れる筑後川流域の風土が育んだ久留米絣。その伝統を100年以上にわたって守り続ける池田絣工房は、筑後市久富に工房を構え、今も天然藍での染色と手織りという正攻法の製法にこだわり続ける数少ない織元のひとつです。
200年の歴史を持つ久留米絣と、工房の歩み
久留米絣は1800年ごろ、旧久留米藩内の少女・井上伝によって考案されたとされる木綿織物です。経糸や緯糸を前もって染め分け(括って防染し)、織り上げることで独特の滲んだような柄を生み出す「絣(かすり)」の技法を用います。旧久留米藩の広川・筑後・八女といったエリアで長く受け継がれてきましたが、産業化の波と生活様式の変化の中で織元の数は激減し、現在では全国でも20件弱しか残っていません。
池田絣工房はその中のひとつ。創業は大正8年(1919年)で、以来一世紀にわたり、藍染と手織りという最も伝統的な製法を途絶えさせることなく続けてきました。
天然藍が生み出す、他にない色合い
工房の大きな特徴が、天然藍(植物由来の藍)にこだわった染色です。化学染料では出せない複雑な深みと、時を経るごとに増す味わいが天然藍の魅力。職人は藍甕を管理しながら、糸が均一かつ深く染まるよう染色と乾燥を繰り返します。この工程なしに、久留米絣ならではのやわらかな青は生まれません。
手織りが宿す、職人の感覚
染め上がった糸は、昔ながらの手織り機で一枚一枚の布へと仕上げられます。投げ杼(なげひ)で緯糸を通し、経糸の柄模様と位置を合わせながら筬(おさ)を手前にトントンと打ち込む——この「打ち込み具合」と「踏木の踏み加減」が生地の風合いを決定づけます。力加減は数値化できず、繰り返しの経験によって研ぎ澄まされた職人の身体感覚だけが頼り。同じ設計図から織り始めても、職人ごとに布の表情が異なるのが手織りの本質です。
伝統を守りながら、現代へ開く
池田絣工房が特徴的なのは、伝統技術の継承にとどまらず、外の世界との協働を積極的に進めている点です。セレクトショップ「ビームス」のブランド「CATHRI」との生地開発、岡山の老舗地下足袋メーカー「丸五ウエルネス」との素材コラボ、久留米絣問屋オカモト商店(ブランド名「儀右ヱ門」)との連携など、産地の外のクリエイターや事業者と布の可能性を共に探っています。「人と人、久留米絣をつなぐ」を仕事と語る工房プロデューサーの言葉が、この姿勢を象徴しています。
藍染体験・一日工程ツアー・工場見学
工房では見学・体験プログラムも受け付けています。職人が実際に使用している染工場での藍染体験、絣作りのほぼ全工程を追う一日体験ツアー、そして機織り工場を中心とした見学のみのコースも用意されています。布が完成するまでの長い工程を間近で見ることで、久留米絣の一反に込められた時間と手仕事の厚みを実感できます。体験・見学はいずれも問い合わせ対応となるため、訪問前に確認が必要です。
アクセス
福岡県筑後市久富1840
営業時間
10:00~17:00
料金目安
2,000円~4,000円
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