
会津型染織「TSUMUGI」
GALLERY
福島県会津若松市の七日町通りに、伝統と未来をつなぐユニークな体験型ストアがある。会津型染織「TSUMUGI」は、江戸時代から続く染型紙の技法と、廃棄資源を活かすアップサイクルのものづくりが交差する、唯一無二の空間だ。
七日町通りに息づく、伝統とサステナブルの交差点
会津若松駅から歩いてすぐの七日町通りは、古い蔵や商家が軒を連ねる、会津若松を代表する観光エリアだ。その一角に佇む明治時代の古民家を活用した店舗が、会津型染織「TSUMUGI」である。外観からすでに歴史の重みが伝わってくるが、一歩足を踏み入れると、そこには伝統工芸と現代のサステナブルな発想が見事に融合した世界が広がっている。
このストアのコンセプトは「伝統とアップサイクルが出会う、体験型コンセプトストア」。江戸時代末期から昭和初期にかけて福島県・喜多方で盛んに生産された染型紙「会津型」と、廃棄されていた紙資源や間伐材から生み出されたアップサイクル素材「紙糸」という、二つの軸が、ここTSUMUGIにおいて力強く結びついている。
「会津型」とは何か——東北に広がった染型紙の歴史
会津型とは、江戸時代末期から昭和初期にかけて喜多方を中心に生産され、東北一円へと流通した染型紙のことを指す。和紙に柿渋を塗り重ね、職人が繊細な模様を一枚一枚丁寧に彫り上げたこの型紙は、庶民が日常的に着る着物や浴衣の染色に広く使われてきた。草花、幾何学模様、縁起物など、デザインのバリエーションは非常に豊かで、当時の人々の暮らしに深く根ざした民衆文化の産物である。
しかし、明治以降に洋服文化が普及し、さらに印刷技術が進化するにつれて、会津型の需要は急速に失われていった。一度は途絶えかけたこの伝統技術だが、その芸術的・文化的な価値が改めて見直され、現在では福島県および喜多方市の有形民俗文化財に指定されている。TSUMUGIは、この貴重な技術を「体験」という形で現代に蘇らせ、訪れる人々に直接触れてもらえる場を提供している。
紙糸のアップサイクル——廃棄から生まれる素材の革命
TSUMUGIのもう一つの大きなテーマが、「紙糸」というアップサイクル素材だ。古紙や間伐材などこれまで廃棄されてきた紙資源を細く裂いて撚り合わせることで生まれる紙糸は、柔らかな肌触り、優れた吸湿性、そして軽量性という三つの特長を持つ天然素材である。
化学繊維や過剰生産が問題視されるアパレル産業において、廃棄資源を活用した紙糸による製品は、環境への負荷を大幅に低減する試みでもある。TSUMUGI製品を購入することは、単にモノを手に入れることにとどまらず、地球環境の保全にも寄与するという一歩になる。店内では糸車・糸巻き・織り機・ミシンが並び、紙糸から布、そして製品へと仕上がっていく各工程を実際に見学することができる。ものづくりの背景をまるごと体感できるオープンな空間が、TSUMUGIの大きな魅力の一つだ。
手ぶらで参加できる、多彩な体験メニュー
TSUMUGIを訪れる最大の楽しみの一つが、気軽に参加できる手作り体験だ。空きがあれば当日受付も可能で、子ども連れや初心者、一人旅の途中に立ち寄る旅行者にも広く開かれている。
紙糸のコースター織り体験(約30分・1,500円) では、機織り機を使って約10cm角のコースターを自分の手で織り上げる。「織る」という原始的な行為の中に、素材の温もりと創造の喜びが詰まっている。
会津型の型彫り体験(約30分・2,000円) では、草花や赤べこなど多彩なデザインの中から好みの図柄を選び、実際に型紙を彫る。自分の名前を「落款」として刻むこともでき、世界に一枚だけのオリジナル型紙が完成する。
会津型の色さし体験(約20分・2,000円〜) は、紙糸で織られた生地に型染めの要領で色を入れ、ハンカチタオル・ポーチ・トートバッグなどの作品を仕上げる体験だ。自分だけの染め物が誕生する瞬間の達成感は、大人も子どもも等しく心を動かされる。
これらを組み合わせた コースター織り+会津型色さしの複合体験(約50分・3,000円) も人気が高い。さらに、草木染めや水引細工など、不定期で特別体験も開催されており、訪れるたびに新しい発見がある。
アップサイクル建築が語る、空間そのものの物語
TSUMUGIの魅力は体験だけではない。店舗として再生された古民家の建築自体が、一つの大きなアート作品であり、アップサイクルの実践例でもある。この建物の再生には、一般社団法人アップサイクルに参画する22の企業・団体が持つ技術と素材が結集した。
壁には沖縄の赤土を混ぜた自然素材や、CO₂を吸収し消臭効果も持つ「焼かないタイル」が使われ、床には紙糸で作った琉球畳と千葉県・山武杉の間伐材・ロス材が敷かれている。家具には山武杉や会津杉が使われ、壁紙は手すきの再生和紙、棚板や柱には廃棄衣服の99%で制作されたものや南会津で解体された古民家の古材が活用されている。照明に至るまで再生紙による和紙アートが取り入れられており、江戸時代から昭和の骨董品が随所にさりげなく配置されている。
こうした空間を歩くだけで、日本各地の伝統素材や廃棄物がいかに美しく再生できるかを体感できる。展示スペースでは紙糸やアップサイクル製品、会津型の型紙と染色技術についての解説も行われており、知的好奇心も十分に満たされる。
旅の記念に、そして日常に寄り添うものたちへ
体験を終えたあとは、店内の物販スペースでゆっくり買い物を楽しみたい。紙糸を使った衣料品や日用品、会津型を取り入れた雑貨など、ここでしか手に入らないアイテムが揃っている。手に取るたびにものづくりのストーリーが感じられる品々は、旅の記念や大切な人へのギフトとして最適だ。
また、2階は一棟貸しの民泊施設としても利用でき、自然素材に包まれた静かな空間で体験の余韻をゆっくりと味わうこともできる。さらにギャラリー展示や小規模イベントの場としても開放されており、地域の創造的な交流の拠点としても機能している。七日町通りを散策する際には、ぜひ立ち寄ってほしい会津若松の新しい名所だ。
アクセス
会津若松駅から徒歩圏内
営業時間
9:00~17:00
料金目安
紙糸のコースター織り体験 ¥1,500、会津型の型彫り体験 ¥2,000、会津型の色さし体験 ¥2,000〜¥3,000、コースター織り + 会津型色さし体験 ¥3,000
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