東京・上野に足を踏み入れると、どこからともなく聞こえてくる威勢のいい売り声と、さまざまな食材や雑貨のにおいが混ざり合う独特の空気感に包まれる。それが上野アメ横商店街——日本有数の活気ある商店街のひとつだ。
アメ横の歴史とルーツ
上野アメ横商店街の歴史は、第二次世界大戦直後にさかのぼる。戦後の混乱期、日本各地では物資が底をつき、新宿、池袋、有楽町など都内各所に闇市が立ち並んでいた。その多くが的屋(テキヤ)の仕切りによるものだったが、当時の上野には満州から引き揚げてきた復員兵約400人が集まり、共同体を形成。彼らは連合会を結成して出店を自ら統制するというユニークな形をとった。こうして生まれたアメ横は、戦後の闇市形態が発展・変容した商店街として、今日まで生き続けている。
現代の都市の中でこれほど色濃く戦後の商業文化の系譜を受け継ぐ場所は少ない。その歴史的背景を知ったうえで歩くと、雑然としながらも力強い商店街の空気感が、また違った意味を帯びて感じられるはずだ。
「アメ横」という名前の由来
「アメ横」という名称の由来には、実は二つの説がある。ひとつは、戦後の焼け跡で飴売りが多く集まったことから「飴屋横丁」が転じたという説。もうひとつは、戦後に進駐してきたアメリカ軍の放出物資や舶来品を多く取り扱う店が並んでいたことから「アメリカ横丁」が略されたという説だ。どちらが正しいとは断言されておらず、どちらも事実の一端を反映しているとも言われている。
いずれにせよ、「アメ横」という愛称は今や東京を代表するブランドのひとつ。国内外を問わず多くの旅行者がこの名前を目指して訪れるほど、広く知られた存在となっている。
約500mに400店舗以上が集結
JR上野駅からJR御徒町駅の間、高架線沿いに延びる約500メートルの通り——ここに400店舗以上が軒を連ねているのがアメ横商店街の最大の特徴だ。食料品、鮮魚、精肉、乾物といった食品系の店から、ブランド品・時計・バッグ・衣類などのファッション系、さらには化粧品、スポーツ用品、輸入雑貨まで、扱うジャンルは驚くほど幅広い。
「横のデパート」という表現がぴったりなほど、専門性の高い店が並んでいる点もアメ横の魅力だ。珍しい食材や希少な品物を扱う専門店が多く、店員に商品について質問すると、その豊富な知識量に思わず感心させられることもある。観光で立ち寄るだけでなく、目的の品を求めて定期的に足を運ぶリピーターが多いのも、アメ横ならではの光景だ。
食べ歩きと買い物の楽しみ方
アメ横を訪れるなら、ぜひ食べ歩きも楽しみたい。海鮮系の丼や串焼き、揚げ物、スイーツなど、歩きながら気軽に楽しめる食べ物の店が随所に点在している。特に鮮魚や珍味を扱う店は充実しており、旅行者だけでなく地元の料理好きも足繁く通う場所となっている。
買い物を楽しむコツとして、公式サイトでも紹介されているのが「まず店員さんに気軽に話しかけてみること」。アメ横では店員との会話そのものが楽しみのひとつであり、商品に関する豊富な知識を持った店員が多い。ただし、無理な値引き交渉はマナー違反。程よいコミュニケーションを心がけることで、買い物の楽しさがぐっと増す。迷路のように入り組んだ路地を歩きながら、気になる店に立ち寄って店員と話してみると、思わぬ掘り出し物に出合えることもある。
年末の風物詩と令和の新展開
アメ横がテレビや各種メディアに取り上げられる機会として最も多いのが、年末の賑わいだ。12月末になると、正月食材を求める買い物客と観光客が一斉に押し寄せ、通りは人であふれ返る。威勢のいい売り声が飛び交い、活気が最高潮に達するこの光景は、東京の師走を代表する風物詩として長く親しまれてきた。
一方、近年は観光地としての整備も進んでいる。令和6年度には、東京都産業労働局が実施する「観光資源の保全等のための支援事業重点エリア」にアメ横商店街が指定され、地域としての観光振興がより組織的に取り組まれるようになった。スーツケースなどの手荷物を預けて手ぶらで観光できるサービスの案内も充実しており、外国人旅行者を含む幅広い来街者が快適に楽しめる環境が整いつつある。
アクセスと訪問時のポイント
アクセスは非常に便利で、JR上野駅または御徒町駅から徒歩すぐ。電話での問い合わせは03-3832-5053、公式サイト(http://www.ameyoko.net/)では商店街マップや加盟店情報も確認できる。
商店街は複数の振興組合によって構成されており、「上野アメ横表通り商店街振興組合」「アメ横御徒町JOY」「アメ横プラザ商店街」「アメ横ウェルカムモール」など、エリアごとに異なる顔を持つ。どこから入っても楽しめるが、時間に余裕があれば高架下から表通り、路地裏まで、くまなく歩いてみることをおすすめしたい。
平日の午前中は比較的混雑が少なく、じっくりと店を見て回ることができる。週末や連休、年末年始は特に混雑するため、混雑が苦手な方は平日に訪れるのがベターだ。東京観光の定番スポットとして押さえておきたい場所であると同時に、何度訪れても新しい発見がある奥深い商店街——それが上野アメ横商店街だ。
アクセス
JR上野駅から徒歩約3分、JR御徒町駅から徒歩約3分
営業時間
料金目安