岐阜県下呂市の中心部、飛騨川の河川敷に佇む噴泉池は、下呂温泉を象徴する野外スポットです。温泉街の喧騒を離れ、川のせせらぎを耳にしながら名湯の源泉に直接触れられる場所として、国内外の旅人を惹きつけてやみません。
白鷺伝説が生んだ、源泉の地
下呂温泉の始まりには、ひとつの美しい伝説があります。鎌倉時代中頃の文永2年(1265年)、それまで温泉街から約4キロ離れた湯ヶ峰の山頂付近で湧き出ていた源泉が突然止まってしまいました。村人たちが途方に暮れていたところ、薬師如来が傷ついた一羽の白鷺に姿を変え、飛騨川の河原で傷を癒しながら新たな源泉の場所を知らせたと伝えられています。これが「白鷺伝説」として今も語り継がれる物語です。
この伝説の舞台となった飛騨川の河川敷こそが、現在の噴泉池が位置するエリアです。山中という不便な場所から平地へと湧出地が移ったことで温泉の利用が格段に便利になり、下呂温泉の評判は全国へと広がっていきました。噴泉池に立ち寄ることは、700年以上前に遡るこの歴史の起点に触れることでもあります。
天下の三名泉に輝く、日本屈指の名湯
下呂温泉が日本を代表する名湯として知られるようになったのは、室町時代まで遡ります。全国を紀行した京都五山の僧・万里集九は、その詩文集『梅花無尽蔵』に「本邦六十余州ごとに霊湯あり。その最たるものは、上野の草津、津陽の有馬、飛州の湯島(下呂)」と記し、下呂温泉を全国最高の名湯のひとつとして称えました。
その評価は江戸時代にも引き継がれ、儒学者・林羅山が有馬・草津・下呂の三湯を「天下の三名泉」と称したことで、その名声は不動のものとなりました。林羅山は著書の中で「入湯する人はその験を得ざることなし」と記しており、実際に浴してみれば必ずその恩恵を感じられるほどの名湯だと伝えています。現在に至るまで、この「三名泉」の称号は下呂温泉のアイデンティティとして輝き続けています。
美肌の湯として名高い、下呂の泉質
下呂温泉の泉質は「単純温泉(アルカリ性単純温泉)」に分類されます。無色透明でほんのりとした湯の香りがあり、肌に触れた瞬間に感じる滑らかさが特徴です。その秘密は、pH値9以上というアルカリ性にあります。アルカリ性の温泉は石鹸のような効果を持ち、肌表面の古い角質をやさしく取り除いてくれます。入浴後は肌がつるつると整い、「美人の湯」と呼ばれるゆえんがここにあります。
また、入浴すると体の芯からじっくりと温まり、血行が促進されることから「健康の湯」とも親しまれています。疲労回復や健康増進はもちろん、リウマチや神経症、病後の回復にも効能があるとされており、美容と健康の両面で優れた効果が期待できる名湯です。現在は昭和49年から実施されている集中管理により、55度の温泉が温泉街各所の旅館へと安定的に配湯されています。
飛騨川のほとりで体験する、源泉との出会い
下呂温泉街の中央を流れる飛騨川の河川敷に整備された噴泉池は、名実ともに下呂温泉のシンボルです。旅の記念に源泉に手を浸し、その温もりを肌で感じる体験は、旅館の大浴場とはまた違った趣があります。川の流れを眺めながら温かな源泉に触れると、かつて白鷺が傷を癒したというこの地の歴史が、ふと身近に感じられるひとときです。
ただし、令和3年(2021年)12月1日より、噴泉池での入浴利用は禁止されています。現在は源泉に触れることや写真撮影を楽しむ観光スポットとして開放されており、足湯や全身浴を楽しみたい場合は周辺の日帰り入浴施設を利用する形となります。噴泉池では毎朝7時から8時の間に定期清掃が行われており、訪れる人が気持ちよく利用できるよう管理されています。
下呂温泉をより深く楽しむ、周辺の入浴施設
噴泉池での源泉体験に加え、下呂温泉の湯をじっくりと堪能したい場合は、温泉街に点在する日帰り入浴施設が便利です。「クアガーデン露天風呂」は飛騨川のせせらぎを楽しめる露天風呂をはじめ6種類の温泉浴が揃う総合温泉保養館で、毎週木曜定休・大人700円で利用できます。「白鷺の湯」は洋館風の白い建物が目印で、ヒノキ風呂の内湯と玄関前の足湯が揃い、大人430円と手ごろな価格が魅力です。
また、温泉街を散策しながら複数の旅館の風呂を巡りたい方には「湯めぐり手形」がおすすめです。手形1枚で加盟旅館約15軒の中から3か所を選んで入浴でき、下呂温泉の多彩な湯を比べながら楽しむことができます。宿泊者でなくても気軽に旅館の風呂を体験できるため、日帰り旅行でも充実した温泉体験が実現します。
アクセスと訪問のポイント
下呂温泉 噴泉池へのアクセスは、JR高山本線「下呂駅」から徒歩約5分と非常に便利です。温泉街の中心部に位置しているため、駅を降りてすぐに温泉の雰囲気を体感できます。観光案内や問い合わせは下呂市観光関連窓口(電話:0576-24-2222)にて受け付けています。
噴泉池は屋外施設のため、季節によって楽しみ方が変わります。冬は白い湯気が川面に漂う幻想的な光景を、夏は清涼感漂う川沿いの景色とともに源泉の温もりを楽しめます。温泉街のショッピングや食事と組み合わせながら、下呂ならではの旅の一コマをここで刻んでみてください。
アクセス
JR高山線下呂駅から(具体的な距離は記載なし。下呂温泉街の中央を流れる飛騨川河川敷)
営業時間
入浴利用は禁止(2021年12月1日以降)。源泉への接触・撮影は可能。清掃時間:7:00〜8:00
料金目安