盛岡駅西側に広がる緑豊かな盛岡市中央公園の一角に、岩手県立美術館はたたずんでいます。2001年10月の開館以来、岩手ゆかりの作家たちの作品を核に、地域に根ざしたアート文化の発信地として多くの来館者に親しまれてきた美術館です。
岩手が育んだ三人の巨匠
岩手県立美術館の核心にあるのは、萬鐵五郎、松本竣介、舟越保武という三人の作家の作品群です。この三人はいずれも岩手と深いつながりを持ち、日本の近現代美術史においても重要な足跡を残した存在として知られています。
萬鐵五郎は1885年に現在の岩手県花巻市に生まれた画家で、日本の洋画界に表現主義的な息吹をもたらした先駆者のひとりです。野性的なタッチと鮮烈な色彩は、同時代の画家たちとは一線を画した個性として評価されています。松本竣介は東京で活動しながらも岩手で幼少期を過ごした洋画家で、戦時下の都市風景を独特の静謐さで描いた作品が今も深く心に響きます。舟越保武は1912年に旧・岩手郡一戸町(現・二戸郡一戸町)に生まれた彫刻家で、信仰心に満ちた繊細な人物彫刻で知られています。大理石や石材から生み出される表情には、静かな祈りのようなものが宿っており、見る人の胸を打ちます。
これら三人の作品は常設コレクションの核を成しており、岩手という土地がいかに豊かな芸術家を輩出してきたかを実感できる展示となっています。
充実した企画展とコレクション展
常設の所蔵作品を楽しむだけでなく、岩手県立美術館では年間を通じて多彩な企画展やコレクション展が開催されています。国内外の著名作家にスポットを当てた大規模な企画展から、所蔵作品の中から特定のテーマを掘り下げるコレクション展まで、訪れるたびに新しい発見がある構成です。
たとえばコレクション展では「特集:ユーモアとトリック 福田繫雄のポスター」のように、岩手にゆかりのある作家にスポットを当てた特集企画も定期的に実施されています。福田繫雄は少年時代を二戸市で過ごした世界的なグラフィックデザイナーで、トリックアートを駆使した遊び心あふれる作品は子どもから大人まで楽しめます。また「藤田嗣治 7つの情熱」のような大規模な巡回展なども順次開催されており、東北在住の方にとって都市圏まで足を運ばずとも世界水準の美術に触れられる貴重な機会となっています。
年間スケジュールは公式サイトで随時更新されているため、訪問前に確認しておくとより充実した鑑賞体験が得られるでしょう。
子どもから大人まで楽しめるイベント
美術館といえば静かに鑑賞するだけの場所というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、岩手県立美術館ではさまざまなイベントや教育普及活動が活発に展開されています。
特に注目したいのが「アートデオヤコ」です。3〜6歳までの就学前幼児とその保護者を対象としたワークショップで、身近な素材を使った体験を通じて子どもの自由な創造力を引き出すことを目的としています。美術館スタッフと親子が一緒にコミュニケーションを取りながらアートと向き合うこのプログラムは、「美術館デビュー」にも最適です。
また毎月第2木曜日と第4土曜日の午前中は「ファミリータイム」として設定されており、小さな子ども連れの来館者が優先的に鑑賞できる時間帯となっています。子育て中の家庭が気兼ねなくアートに親しめる環境づくりへの配慮が感じられます。
大人向けには館長による「館長講座」も開催されており、美術教員・現代美術家としてのキャリアを持つ館長が多様な視点から作品の楽しみ方を語る講座は、美術鑑賞をより深いものにしてくれます。さらに毎月1回定期開催される「アート・シネマ上映会」では、企画展に関連した映像作品や名作映画が上映され、映画ファンにも人気を集めています。
美術館内のカフェとショップ
鑑賞の合間や帰り際に立ち寄れるスポットとして、館内にはミュージアムカフェ「Coccole Caffé( ココレ・カフェ)」とミュージアムショップ「ガレリーナ」が設けられています。
Coccole Cafféはイタリア語で「抱擁」や「大切にすること」を意味する言葉を冠したカフェで、落ち着いた雰囲気の中でゆったりとした時間を過ごすことができます。展覧会鑑賞の余韻を楽しみながらのひとときは、美術館訪問の締めくくりにぴったりです。ガレリーナでは美術関連の書籍やオリジナルグッズ、企画展に合わせた限定商品なども取り扱っており、訪問の記念品や大切な人へのお土産探しにも楽しめます。
アクセスと基本情報
岩手県立美術館は、JR盛岡駅から車で約10分ほどの盛岡市中央公園内に位置しています。公園自体も広大な緑地を有しており、美術鑑賞と合わせて自然散策を楽しむこともできます。季節ごとに表情を変える公園の風景と美術館の建物が調和した景色は、訪れる人の心を和ませてくれます。
開館時間は9:30〜18:00(入館は17:30まで)で、休館日は原則として月曜日です。ただし月曜日が祝日や振替休日にあたる場合は開館し、直後の平日に振り替えて休館となるため、訪問前にカレンダーを確認しておくと安心です。電話番号は019-658-1711で、詳細な観覧料や各種割引については公式サイト(www.ima.or.jp)から最新情報を確認することをおすすめします。岩手を旅する際には、ぜひ立ち寄ってほしい文化施設のひとつです。
アクセス
盛岡駅西側、盛岡市中央公園内(住所: 岩手県盛岡市本宮字松幅 12-3)
営業時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)、定休日: 月曜日(祝日・振替休日は除く)
料金目安