東京大学 弥生キャンパス
東京大学の農学・生命科学研究の拠点として知られる弥生キャンパスは、文京区弥生に広がる緑豊かな学術空間です。地下鉄東大前駅から徒歩0分という好立地でありながら、都心とは思えない静けさと自然に包まれており、訪れる人に独特の雰囲気を与えます。
農学と生命科学の最前線を担うキャンパス
弥生キャンパスは、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部の本拠地です。農学・生命科学・食品科学・獣医学など、生命と食と環境に関わる広範な学術領域をカバーしており、国内屈指の研究機関として長い歴史を誇ります。
キャンパスの名は、このあたりが弥生式土器の出土地に由来すると長らく考えられてきた地名に由来します。近年の研究では、弥生式土器の実際の発見地が現在の生命科学総合研究棟付近ではないかという説も発表されており、キャンパス自体が歴史的な土地の上に立っていることが改めて注目されています。
本郷キャンパスとは言問通りをまたぐ陸橋で直接つながっており、両キャンパスは一体的に機能しています。学生たちはこの陸橋周辺の言問通りを「ドーバー海峡」と呼ぶなど、独自の文化と愛着がキャンパス生活に根付いています。
歴史的建造物と最新研究施設が共存する空間
弥生キャンパスを歩くと、まず目を引くのが戦前に建設された重厚な建物群です。農学部1号館・2号館・3号館はいずれも歴史ある外観を保っており、なかでも3号館は東京都選定歴史的建造物に指定されています。重厚な石造りの外壁と落ち着いた内部空間は、長年にわたって東京大学農学部の顔となってきました。
3号館には学生サービスセンター、事務室、国際交流室、農学部生協などが集まり、学生生活の中心となっています。地下にある農学部生協は、実は東京大学生協発祥の地としても知られ、小さいながらも食料品・書籍・文房具・PC関連製品など一通りのものが揃い、学生から親しまれてきました。
一方、近年整備された生命科学総合研究棟やフードサイエンス棟は、最先端の研究設備を備えた現代的な施設です。フードサイエンス棟は地上8階建てで、食の安全研究センターを中心に、産学連携の研究室・実験室や動物飼育実験施設も設置されています。2階正面入口から入ると、右手に中島董一郎記念ホール、左手にはCafe Agli 101(カフェ アグリ ワンオーワン)があり、カフェメニューやドーナツなど軽食を楽しむことができます。研究の合間にほっと一息つける場所として、学内外の利用者に好評です。
キャンパスに息づく「農学」の証
都心のキャンパスでありながら、弥生キャンパスには農学部ならではの施設が存在します。敷地南東側に広がる圃場(ほじょう)は、植物を実際に育てて研究するスペースです。都内の大学キャンパスにハウスや畑があるのは非常に珍しく、ここでも農学の最先端研究が日々行われています。土に触れながら学ぶ実践的な農学教育の姿が、この場所に凝縮されています。
また、動物医療センターも弥生キャンパス内に設置されており、動物の診断・治療を行いながら、同時に学生の教育・研究にも活用されています。獣医学を学ぶ学生にとって、実際の臨床現場で経験を積める貴重な環境です。
研究科全体の図書館である農学生命科学図書館は、3号館の南側、言問通り沿いに位置しています。単なる学内図書館にとどまらず、全国農学系拠点図書館として指定されており、国内でも有数の農学関連資料を所蔵しています。図書・雑誌の閲覧・貸し出しのほか、端末や無線LANも利用可能で、研究に必要な情報環境が整っています。
ハチ公ゆかりの地としての顔
弥生キャンパスは学術的な場であると同時に、ある有名な逸話の舞台でもあります。正門(農正門)を入ってすぐ右手にある農学資料館には、忠犬ハチ公の臓器標本をはじめ、農学部が長年にわたって収集・保存してきた貴重な資料が展示されています。
さらに、弥生講堂アネックスの前には「上野英三郎博士とハチ公」の像が設置されており、多くの見学者や観光客が足を運びます。ハチ公が渋谷駅前で待ち続けた主人・上野英三郎博士は、東京帝国大学農学部(現・東京大学農学部)の教授であり、弥生キャンパスはその縁の地でもあります。この像は、師と愛犬が再び寄り添う姿を表現しており、訪れた人の心に温かな印象を残します。
弥生講堂は学会発表やシンポジウムに使用される本格的な講堂で、弥生講堂アネックスは懇親会やセミナー・講義にも対応する多目的スペースです。いずれも木造のユニークなデザインが印象的で、キャンパスの景観に個性を添えています。
豊かな緑と季節の移ろい
弥生キャンパスは、都内とは思えないほど緑が豊かです。キャンパス内には大きな木が多く植えられており、3号館前に並ぶ銀杏並木は、春の新緑と秋の黄葉でまったく異なる表情を見せます。季節ごとに変わる木々の色づきを楽しみながら学び、研究できる環境は、長い学生生活の中で心の余裕をもたらしてくれます。
一部の木は大きくなりすぎてやむなく伐採されましたが、その切り株や木材をキャンパス内で再利用し、憩いの場を創出するなど、農学部らしい自然との共生が随所に感じられます。本郷キャンパスとは言問通りを隔てて接しながらも、弥生キャンパスはその静かな緑のたたずまいによって、独自のアイデンティティを確立しています。
アクセスと利用案内
弥生キャンパスへのアクセスは非常に便利です。東京メトロ南北線・東大前駅の出口から農正門(農学部の正門)まで徒歩0分という抜群の立地で、雨の日でもほぼ濡れることなくキャンパスへ入ることができます。また、南門は言問通りに面しており、根津方面や弥生坂からのアクセスにも便利です。
本郷キャンパスとをつなぐ陸橋を渡れば、赤門や安田講堂で知られる本郷キャンパスにもすぐに足を延ばすことができます。上野・根津・谷中といった下町文化が残るエリアにも近く、東京大学という知の拠点を軸に、歴史・文化・自然が交差する独特の地域性を体感できるロケーションにあります。
農学・獣医学・食品科学などを志す学生だけでなく、キャンパス見学や「上野英三郎博士とハチ公」像の見物、農学資料館の展示観覧など、一般の方にとっても訪れる価値が十分にある場所です。静かな緑の中に歴史と最先端が共存する弥生キャンパスは、東京における学術文化の厚みを体感できる、唯一無二のスポットです。
アクセス
地下鉄東大前駅から徒歩0分(農正門)
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