北上川と中津川が出会う丘陵の上に、400年以上の歴史を刻む盛岡城跡公園。春の桜、梅、夏の藤やアジサイと四季折々の表情を見せながら、歴史と自然が溶け合った市民の憩いの場として多くの人に親しまれています。
盛岡城の誕生と南部氏の400年
盛岡城の歴史は、慶長2(1597)年にさかのぼります。三戸から不来方(こずかた)の地へ居城を移すことを決めた南部信直は、嫡子・利直を総奉行として築城工事をスタートさせました。城の縄張りは豊臣家の重臣・浅野長政の助言を得て計画されたといわれており、北上川と中津川の合流点に突き出た天然の丘陵地を巧みに利用した堅固な設計が特徴です。
本丸・二ノ丸・三ノ丸・淡路丸など複数の曲輪(くるわ)を配し、それぞれに雄大な石垣を構築。その外側には城下町を囲む堀と土塁を設け、南部氏一族や重臣の屋敷地、さらに武士や町人たちの暮らす外構えまでを包み込んだ、重層的な城郭都市が形成されました。
築城中には北上川・中津川の洪水に何度も見舞われながらも工事は続けられ、築城開始から36年後の寛永10(1633)年、3代藩主・南部重直がついに入城。以後、廃藩置県まで盛岡南部氏の居城として藩政の中心を担い続けました。
廃城から公園へ——近代の歩み
明治維新後、戊辰戦争で官軍側に敗れた盛岡藩は明治元(1868)年に降伏。城は新政府の直轄地となり、廃藩置県後の明治5(1872)年には陸軍省の管轄へと移りました。そして明治7(1874)年、場内の建物や樹木が一般入札で払い下げられ解体・撤去。かつての壮麗な城郭は急速に荒廃していきました。
荒れ果てた城跡に転機が訪れたのは明治39(1906)年。近代公園の先駆者として知られる造園家・長岡安平の設計により、岩手県が公園として整備に着手し、同年9月15日に「岩手公園」として開園しました。昭和9(1934)年には盛岡市に管理が移管され、昭和12(1937)年には国指定史跡の指定も受けています。
開園から100年が経過した平成18(2006)年には「盛岡城跡公園」の愛称が正式に決定。同年、「日本100名城」(日本城郭協会)と「日本の歴史公園100選」にも選ばれ、全国的な評価を受けた歴史公園として今に至ります。
見どころその1——花崗岩が語る石垣の技
盛岡城跡を訪れた人が最初に圧倒されるのが、その石垣の迫力です。城内およびその周辺(内丸など)で採取した花崗岩のみを使って積み上げられたこの石垣は、構築された時代や目的によって三つの異なる積み方が見られます。
自然石をほぼそのままの形で積み上げる「野面積(のづらづみ)」、大小さまざまな割石をパズルのように組み合わせる「乱積(らんづみ)」、そして方形に整えた石を横目地をそろえてレンガのように積む「布積(ぬのづみ)」——それぞれの工法が城内の各所に残り、築城技術の変遷を肌で感じることができます。
石垣は江戸時代以来、地震や降雨、樹木の根の影響を受けて傷みが進んでおり、昭和59(1984)年から継続的に解体修復事業が行われています。総面積約1万6,000平方メートルのうち、傷みの目立つ約5,000平方メートルを少しずつ丁寧に修復する作業は現在も続いており、歴史遺産を未来へ守り伝えるための地道な取り組みが続けられています。
見どころその2——四季彩る園内スポット
城跡公園の魅力は歴史だけにとどまりません。9.2ヘクタールの広大な敷地には、季節ごとに異なる表情を楽しめるスポットが点在しています。
4月上旬には、ブンゴウメ・シダレウメ・白梅など約100本の梅が咲き競うウメ林が見ごろを迎えます。花見のシーズンには桜も加わり、園内は一面ピンクと白の花のじゅうたんに包まれます。
盛岡城の内堀跡を利用した「鶴ケ池」と「亀ケ池」は、桜山の鳥居を中心に東西に並ぶ趣ある池。5月には鶴ケ池の藤棚が紫の花房を垂らし、7月には周囲のアジサイが一斉に咲き誇ります。夜になれば「ホタルの里」と呼ばれるせせらぎ沿いでホタルが飛び交うこともあり、夏の夜の幻想的な風景が楽しめます。
ユリノキの大木が並ぶ遊歩道「ビクトリアロード」は、中津川のせせらぎとともに緑陰の散歩道として人気のスポット。カナダのビクトリア市と盛岡市が姉妹都市提携10周年を迎えた際に命名されたもので、国際交流の歴史も刻まれています。
園内の文化財——時鐘と往時の記憶
公園内には歴史的な文化財も残されています。なかでも注目したいのが「時鐘(日影門外時鐘)」です。この鐘は延宝7(1679)年、4代藩主・南部重信の時代に、その子・行信の発願によって京都から招かれた釜師・小泉五郎七清則によって鋳造されました。
もとは日影門付近の土塁の上に設置され、江戸時代から昭和30(1955)年ごろまでの約280年にわたり、盛岡の人々に時刻を知らせ続けた生活の音です。昭和42(1967)年に市の指定文化財となり、その後、平成27(2015)年には岩手県の指定有形文化財にも指定されました。
多目的広場(旧・御台所跡)では、消防団の出初式や各種イベントが開催されており、藩政時代に財務を担う屋敷が置かれたこの場所が、今も市民の活動の場として息づいています。
アクセスと訪問のヒント
盛岡城跡公園は、JR盛岡駅から徒歩約15分のところに位置し、盛岡市の中心市街地からも気軽に立ち寄れる距離にあります。公園地下には駐車場も整備されており、車でのアクセスも可能です。
入園は無料で、年間を通じて開放されています。春の梅・桜、初夏の藤・アジサイ、秋の紅葉、冬の雪景色と、訪れる季節によって全く異なる景観が待っています。城内のガイドマップは公式サイトからダウンロードできるほか、NPO法人「緑の相談室」が指定管理者として日々の管理・運営を担っており、詳細な案内も充実しています。
問い合わせ先は盛岡市(電話:019-639-9057)まで。歴史と自然が交差する盛岡城跡公園を、ぜひ訪れてみてください。
アクセス
盛岡駅から徒歩約15分
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