四国の山あいに広がる砥部町に、動物好きなら一度は訪れたい場所がある。愛媛県立とべ動物園は、四国最大級の広さを誇り、世代を超えて愛され続ける動物たちの楽園だ。子どもから大人まで、ここでしか出会えない感動が待っている。
四国最大の動物園、その規模と歴史
愛媛県立とべ動物園は、1988年に開園した愛媛県立の動物園で、砥部町の丘陵地帯に位置する。総面積は約30ヘクタールにおよび、約170種・800点以上の動物を飼育・展示している。四国4県の中でも最大規模を誇り、開園以来30年以上にわたって多くのファミリーや動物ファンに親しまれてきた。
園内は自然の地形を巧みに活かした設計が特徴で、なだらかな丘と緑豊かな樹木の中に各動物舎が点在している。単なる「見せ物」としての展示ではなく、動物本来の行動が引き出されやすい環境を整えることで、生き生きとした動物たちの姿を間近に観察できるのがこの園の大きな魅力だ。また飼育員が長年にわたって積み重ねてきた繁殖・飼育技術は国内でも高く評価されており、その成果は後述する「ピース」の存在が何よりも証明している。
「ピース」が生まれた場所 ― ホッキョクグマの聖地
とべ動物園の名を全国区にしたのが、ホッキョクグマの「ピース」だ。2002年に同園で誕生したピースは、母親グマによる育児放棄という困難な状況に直面した。しかし担当飼育員の高市敦広さんが愛情を注いで人工哺育を行い、見事に成長させることに成功。これは日本で初めてのホッキョクグマ人工哺育成功例として、国内外から大きな注目を集めた。
その後、ピースは成長し、丸くふっくらとした愛嬌たっぷりの姿で多くのファンを魅了してきた。飼育員と絶大な信頼関係を築いたピースの姿は書籍や映像でも紹介され、「白くまピース」は今やとべ動物園のシンボルとして確固たる地位を占めている。ピースの展示エリアは常に賑わいを見せており、のんびりと動き回る姿や飼育員とのふれあいシーンを目当てに訪れるリピーターも多い。
見どころいっぱいの園内 ― 人気動物たちに会いに行こう
ピース以外にも、とべ動物園には魅力的な動物が勢ぞろいしている。アフリカゾウやアミメキリン、ライオン、チンパンジーなど、大型動物の迫力ある展示は訪れる人を圧倒する。キリンは手渡しエサやり体験(開催時期・条件あり)も行われており、長い首を伸ばして近づいてくる姿は大人も思わず歓声を上げるほどだ。
人気が高いのはレッサーパンダのエリアでもある。愛くるしい赤茶色の毛並みとふわふわの尾を持つレッサーパンダは、立ち上がる「スタンディング」ポーズを見せることもあり、カメラを向けるファンが絶えない。また爬虫類館や鳥類展示エリアなど、哺乳類以外の生き物も充実しており、幅広い生き物への興味・関心を育む場としても優れている。
子どもたちに特に人気なのが「ふれあい広場」だ。ウサギやモルモット、ヤギなどの小動物を実際に手で触れることができ、生き物の温もりを直接感じられる体験は、特に幼い子どもにとって忘れられない思い出となるだろう。動物とのふれあいを通じて命の大切さや自然への敬意を育む、教育的な場としての役割も担っている。
季節ごとに変わる楽しみ方
とべ動物園は一年を通じて訪れる価値があるが、季節によって異なる魅力がある。
春(3月〜5月)は園内の桜が咲き誇り、花見を兼ねた来園が楽しめる季節だ。新緑の中で動物たちも活発に動き回り、心地よい陽気の中でのんびり散策するのに最適な時期といえる。春には動物の赤ちゃんが誕生することも多く、かわいい新顔との出会いも期待できる。
夏(6月〜8月)は子どもたちの夏休みと重なるため、家族連れで特に賑わう季節だ。暑い日はホッキョクグマや水辺の動物が涼しそうに過ごす姿が印象的。一方で来園者自身も暑さ対策を万全にして訪れたい。夜間開園などの特別イベントが開催される年もあり、事前に公式情報を確認しておくとよい。
秋(9月〜11月)は気候が穏やかで、最も快適に園内を回れる季節だ。紅葉が色づく頃には、木々の赤や黄のグラデーションを背景に動物たちを写真に収めることができる。動物も活発に動き回る時期で、観察のしがいがある。
冬(12月〜2月)はホッキョクグマや北方系の動物たちが活発になる季節。寒さが苦手な動物は室内展示になるものの、ピースのような寒冷地出身の動物は元気いっぱいの様子を見せてくれる。空気が澄んで見晴らしも良く、人も少ないため、ゆっくり観察したい人には穴場の時期ともいえる。
砥部焼の里と合わせて楽しむ、砥部半日・一日モデルプラン
とべ動物園のある砥部町は、伝統工芸「砥部焼」の産地としても名高い。白磁に藍色の絵付けが特徴の砥部焼は、丈夫で使いやすい日常使いの器として全国にファンを持つ。町内には50を超える窯元が点在しており、砥部焼観光センター「炎の里」では実際に絵付け体験もできる。
動物園と砥部焼の窯元巡りを組み合わせた半日〜一日プランは、ファミリー旅行にも大人のカップル旅にもぴったりだ。午前中に窯元を巡って砥部焼の器を選び、午後からとべ動物園でたっぷり動物と触れ合う、あるいはその逆の順序でも楽しめる。砥部町内には地元の食材を使った飲食店もあり、愛媛ならではのグルメも合わせて堪能できる。
アクセスと来園前のポイント
とべ動物園へのアクセスは、マイカーが最も便利だ。松山自動車道「伊予ICまたは松山IC」から車で約20〜30分ほどで到着できる。松山市内からは国道33号線または県道183号線経由で向かうルートが一般的だ。駐車場は有料で、広めのスペースが確保されている。
公共交通機関を利用する場合は、松山市駅または松山駅前から伊予鉄道バス(砥部線)に乗車し、「とべ動物園前」バス停で下車するのが便利だ。所要時間は約40〜50分ほどで、松山観光と合わせた旅程を組む際にも利用しやすい。
入園料は大人800円、小・中学生200円(未就学児無料)と、規模を考えると比較的リーズナブルな設定だ(料金は変更される場合があるため、公式サイトで最新情報を確認のこと)。園内は広いため、歩きやすいシューズで訪れることをおすすめする。所要時間の目安は2〜3時間程度だが、子ども連れやじっくり観察したい人は半日以上見ておくと余裕を持って楽しめるだろう。四国を訪れる際には、ぜひ日程に組み込みたい必訪スポットだ。
アクセス
JR松山駅からバスで35分
営業時間
9:00〜17:00
料金目安
大人500円、子供200円