将棋の聖地として知られる山形県天童市は、国内で生産される将棋駒のじつに9割以上を占める「駒の町」だ。ここでしか手に入らない将棋モチーフのお土産を探す旅は、将棋ファンはもちろん、ものづくりや日本文化に興味を持つすべての旅行者にとって忘れられない体験となるだろう。
将棋駒の町・天童が生まれるまで
天童が将棋駒の一大産地になった歴史は、明治維新にさかのぼる。江戸時代、天童織田藩の家臣たちは藩の財政難を補うため、副業として将棋駒の製作を始めたとされる。明治維新によって武士の身分が失われると、生計を立てる手段として駒づくりはさらに広まり、やがて地域の基幹産業へと発展していった。
厳しい冬の季節、農閑期の手仕事として根づいた将棋駒の生産は、代々受け継がれる職人技として磨かれてきた。木材には主にツゲやシャムツゲが使われ、熟練の職人が一文字一文字を丁寧に刻む。書き駒・彫り駒・彫り埋め駒・盛り上げ駒と格式によって技法も異なり、最高級の盛り上げ駒ともなれば一組数十万円を超えることも珍しくない。天童の駒は、単なる道具ではなく日本が誇る工芸品なのである。
市内で出会えるお土産の種類と選び方
天童市内には、将棋駒をモチーフにしたお土産を扱うショップや工房が点在している。定番は実用的な将棋駒セットだが、お土産として人気なのはむしろ日常使いできる雑貨類だ。駒の形を模したキーホルダーやストラップ、マグネット、ピンバッジといった小物は手頃な価格で手に入り、旅の記念にもプレゼントにも喜ばれる。
食品系のお土産も充実している。将棋駒の焼き印が押された最中(もなか)や、駒の形をかたどった和菓子は、見た目のユニークさと味わいを兼ね備えた一品として人気が高い。将棋をたしなむ人への手土産はもちろん、将棋を知らない人にも「どうして将棋なの?」という会話のきっかけになる点が魅力だ。
本格的な駒を求めるなら、工房直営の店舗や専門店で職人と直接話しながら選ぶのがおすすめだ。彫り方や木材の種類、書体(楷書・行書・草書など)によって個性が異なり、自分好みの一組を見つける楽しさがある。予算や用途に合わせて丁寧にアドバイスしてくれる店も多く、初心者でも安心して購入できる。
天童市将棋資料館で知識を深めてから
お土産を選ぶ前に、天童市将棋資料館を訪れることをおすすめしたい。天童市役所に隣接するこの施設では、将棋の歴史や駒の製造工程を分かりやすく展示しており、駒づくりへの理解が格段に深まる。実際に使われた職人道具や、貴重な古駒の展示は見ごたえがある。
館内では将棋駒の絵付け体験を行っていることもあり、旅の思い出として自分だけの駒を作ることができる。子どもから大人まで楽しめる体験として、家族連れにも好評だ。資料館の見学を経てからお土産店を回ると、同じ商品でも見える景色が変わる。どの技法で作られているのか、職人がどれだけの手間をかけているかを知った上で手に取る駒には、格別の重みが感じられる。
人が駒になる「人間将棋」の季節に訪れる
天童を訪れるなら、毎年4月に開催される「天童桜まつり人間将棋」に合わせた旅が格別だ。舞鶴山の満開の桜を背景に、武者装束をまとった人が「駒」となって実際の将棋の対局を再現するこのイベントは、天童を代表する春の風物詩として広く知られている。プロ棋士が対局し、大将棋の掛け声とともに人間の駒が盤上を移動する様子は、どこか壮大なエンターテインメントの趣がある。
この時期は市内のお土産店も活気にあふれ、イベント限定の商品が並ぶこともある。桜と将棋という二つの日本文化が交差する天童の春は、旅の記憶に深く刻まれるはずだ。なお舞鶴山は天童公園とも呼ばれ、桜の名所として山形県内でも指折りの場所。人間将棋の時期を外れても、花見シーズンには多くの人が訪れる。
アクセスと周辺スポット
天童市へのアクセスは、JR山形新幹線(奥羽本線)を利用するのが便利だ。山形駅からJR奥羽本線で約10分、天童駅で下車すれば市の中心部はすぐそこだ。東京方面からは山形新幹線「つばさ」で直通約2時間半でアクセスできる。車の場合は東北中央自動車道の天童インターチェンジが近く、仙台市内からは1時間ほどの距離だ。
周辺には温泉地としても名高い天童温泉があり、市内の旅館やホテルに宿泊しながらゆっくりお土産探しを楽しむプランが人気だ。将棋に特化した演出を取り入れた宿泊施設もあり、客室に将棋セットが備え付けられていたり、夕食後に棋士との交流イベントが開かれたりするケースもある。
また山形県内の観光と組み合わせるのもおすすめで、蔵王温泉や山寺(立石寺)、山形市内の文翔館なども日帰り圏内にある。天童のお土産店で将棋駒や関連グッズを買い求めた後、山形の豊かな食文化や自然を満喫する旅程は、東北観光の充実したコースとなるだろう。将棋の奥深さと職人の技が息づく天童は、何度訪れても新たな発見がある町だ。
액세스
JR天童駅から徒歩約5分
영업시간
9:00〜18:00
예산
300〜50,000円