埼玉県行田市の北部に広がるさきたま古墳群は、今から約1,500年以上前に造られた大型古墳が集中する、日本でも屈指の古代遺跡群です。「埼玉」という県名の由来ともなったこの地に立つと、遥か遠い古代の息吹がすぐそこまで迫ってくるような感覚を覚えます。
埼玉県名誕生の地——さきたまの古代史
さきたま古墳群は、5世紀から7世紀にかけて造られた9基の大型古墳で構成される国の特別史跡です。「さきたま」という地名は、古代に「前玉(さきたま)」と呼ばれたことに由来し、その後「埼玉(さいたま)」へと変化、やがて県名へとつながっていきました。つまりこの一帯は、現在の埼玉県という名前のまさに発祥の地といえます。
古墳が造られた時代、関東平野はまだ多くの低湿地に覆われており、さきたま台地はそのなかで一際目立つ微高地でした。この地を治めた豪族たちは、武蔵国(現在の関東地方)における強大な権力を誇り、その象徴として巨大な古墳を次々と築造しました。規模の大きさは当時の権勢をそのまま映しており、なかには全長120メートルを超える前方後円墳も存在します。現在は「さきたま史跡の公園」として整備され、広大な緑のなかを散策しながら古代の歴史に思いを馳せることができます。
国宝「金錯銘鉄剣」——古代史を塗り替えた大発見
古墳群を語るうえで欠かせないのが、1968年に稲荷山古墳から出土した「金錯銘鉄剣(きんさくめいてつけん)」です。この鉄剣は、剣身の両面に金象嵌(きんぞうがん)で115文字が刻まれており、1978年にX線調査によってその全容が判明しました。銘文には「辛亥年」(471年と推定)という年号とともに、8代にわたる系譜と「ワカタケル大王」(雄略天皇)に仕えたことが記されています。
この発見は、大和政権の支配が関東にまで及んでいたことを示す決定的な証拠となり、日本古代史の研究に革命をもたらしました。現在この鉄剣は国宝に指定されており、敷地内の「埼玉県立さきたま史跡の博物館」で実物を見学することができます。博物館には鉄剣のほかにも、各古墳から出土した甲冑・馬具・玉類など多数の重要文化財が展示されており、古代武蔵の豪族たちの暮らしや文化を立体的に理解できます。見学には1〜2時間ほど見ておくとよいでしょう。
古墳に登る、眺める——唯一無二の体験
さきたま古墳群の大きな魅力のひとつは、実際に古墳に登ることができる点です。なかでも丸墓山古墳は直径約105メートル、高さ約18.9メートルを誇る日本最大級の円墳であり、頂上まで登ることが可能です。緩やかな斜面を歩いて頂上に立つと、関東平野が360度にわたって見渡せ、晴れた日には遠く秩父の山並みや富士山のシルエットまで望めることもあります。
また、豊臣秀吉による小田原征伐の際(1590年)に石田三成がこの丸墓山古墳を陣地として使用したという歴史的エピソードも伝わっています。古墳が戦国時代の城として活用されたという話は、古代と中世が重なり合う不思議な時間の交差を感じさせます。
稲荷山古墳や二子山古墳など前方後円墳の上からも景色を楽しめるほか、古墳と古墳のあいだをつなぐ遊歩道を歩けば、それぞれ異なる形や規模の墳丘を間近に観察できます。案内板も充実しているため、歴史に詳しくない方でも十分に楽しめます。
季節ごとの楽しみ方
さきたま史跡の公園は、四季折々の表情を持つ場所でもあります。
**春(3月下旬〜4月中旬)**は、古墳と桜の組み合わせが見事で、特に丸墓山古墳の斜面を彩るソメイヨシノは圧巻です。丸い墳丘を縁取るように咲き誇る桜は、この公園でしか見られない唯一無二の光景であり、毎年多くのお花見客が訪れます。石田三成が陣を張ったとされる場所で桜を愛でるという、歴史好きにはたまらない体験です。
**夏(6月〜7月)**には、公園内や周辺の水田地帯で古代ハスが開花します。行田市は「古代蓮の里」として知られ、1971年に工事中に発見された約1,400年前の種子から自然発芽したハスが今も咲き続けています。さきたま古墳群と組み合わせて訪れると、一日で歴史と自然の両方を満喫できます。
**秋(10月〜11月)**は、木々が色づき始め、人出が比較的落ち着く穴場シーズンです。澄んだ空気のなか、静かに古墳群を散策するには最も適した季節ともいえます。
**冬(12月〜2月)**は空気が澄み渡り、丸墓山古墳の頂上からは富士山や日光連山がはっきりと見えることも。訪れる人が少なく、古代の静寂をより身近に感じられる時季です。
アクセスと周辺情報
さきたま史跡の公園へのアクセスは、秦野線「行田市駅」からバスを利用するか、タクシーで約15分が一般的です。JR高崎線「行田駅」からも路線バスが運行しています。車の場合は関越自動車道「東松山IC」または北関東自動車道「太田・藪塚IC」から約30〜40分程度。駐車場は無料で広く、週末でも比較的停めやすいです。
周辺には歴史観光スポットも多く、行田市内には戦国時代の難攻不落の城として知られる「忍城(おしじょう)」の復元御三階櫓があります。映画『のぼうの城』の舞台となったことで知られ、さきたま古墳群とあわせて訪れることで、古代から戦国時代へと続く行田の歴史を一日で体感できます。また行田名物の「ゼリーフライ」や「フライ(ソース焼き)」は地元のB級グルメとして有名で、散策後のランチに立ち寄る価値があります。
さきたま古墳群は、教科書に出てくる「古墳時代」をリアルに体感できる数少ない場所のひとつです。緑豊かな公園のなかを歩くだけでも気持ちがよく、歴史に詳しくない方や家族連れも気軽に楽しめます。関東近郊の日帰り歴史散策として、ぜひ候補に加えてみてください。
액세스
JR吹上駅からバスで15分
영업시간
終日(博物館9:00〜16:30)
예산
無料(博物館200円)