大雪山系の懐深く、上川町の針葉樹林に抱かれた「大雪森のガーデン」。北海道の短い夏に一斉に咲き誇る花々と、手つかずの自然が共存するこの場所は、訪れる人に深い安らぎと感動をもたらす特別な庭園だ。
大雪山の麓に誕生したナチュラルガーデン
2012年6月に開園した大雪森のガーデンは、北海道上川郡上川町に位置するナチュラルガーデンだ。標高約670メートルの高地にあり、園内からは標高2,000メートルを超える大雪山系の山々を望むことができる。
運営を手がけるのは地域の農業・観光振興に取り組む株式会社ヒルズヴィレッジ。地元上川町と連携しながら、北海道の自然環境を最大限に活かした庭園づくりを続けている。
このガーデンが北海道ガーデン街道を代表する存在となった理由は、その独自の設計思想にある。「造られた美しさ」を追求するのではなく、もともとそこにあった森の姿を尊重し、自然の流れに沿った植栽を施すことで、人と自然が溶け合うような空間を生み出している。宿根草や球根植物を中心に、北海道の気候風土に適した植物が丁寧に組み合わされ、毎年少しずつ変化しながら成熟し続けている。
テーマの異なるゾーンで構成されるガーデンの世界
広大な敷地の中に、テーマの異なる複数のガーデンゾーンが設けられている。メインとなる「森の花園」では、樹齢を重ねた針葉樹の足元に宿根草が広がり、光と影のコントラストが幻想的な雰囲気を醸し出す。「草の花園」はより開放的な空間で、草原のように伸び伸びと咲く花々が北海道の空の広さを感じさせてくれる。
「農の花園」では、野菜や果物と花が混在するポタジェスタイルの植栽が楽しめる。食材としての植物と観賞用の植物が混在する独特の美しさは、農業と花文化が根付く上川町ならではの表現だ。そのほかにも、水辺の植物が集まるゾーンや、苔むした森の奥へと続く小径など、歩くたびに新しい発見がある。
ゾーンとゾーンの間をつなぐ散策路は、急ぎ足で巡るより、ゆっくりと足を止めながら歩くのに適した設計になっている。ベンチや休憩スポットも要所に配置されており、草花の香りを感じながら腰を落ち着けることができる。
北海道の短い夏に凝縮された花の時間
大雪森のガーデンの開園期間は例年6月上旬から10月中旬ごろまで。北海道の短い夏は、長い冬を耐えた植物たちが一気に咲き誇る季節だ。
6月は春の球根植物が先陣を切り、チューリップやアリウム、ムスカリなどが鮮やかに咲き並ぶ。同時に、イングリッシュブルーベルやゲラニウムなど早咲きの宿根草も顔を出し始める。この時期は朝晩の気温がまだ低く、清々しい空気の中で花を楽しめる。
7月から8月にかけてはガーデンのピークシーズン。デルフィニウム、エキナセア、ルドベキアなど多彩な宿根草が次々と開花し、園内全体が色彩豊かな世界に包まれる。この時期の大雪山は緑に覆われ、ガーデンの花々との対比が鮮やかだ。
9月に入ると夏の花から秋の植物へと主役が交代する。アスター、セダム、グラスの穂が揺れる秋の庭は、夏とは異なる落ち着いた美しさがある。朝晩は急激に気温が下がり、空気が澄んで大雪山の峰々がより鮮明に見えるようになる。10月上旬には周囲の木々が紅葉し始め、ガーデンの花と秋色のコントラストが短い期間だけ楽しめる。
ガーデン内の施設でくつろぐ
ガーデン内にはカフェやレストランも併設されており、散策の合間に一息つくことができる。地元上川町や北海道産の食材を使ったメニューが提供されており、ガーデンを訪れた後の食事も旅の楽しみのひとつとなっている。大雪山の山並みを眺めながらいただく料理は、都市部ではなかなか味わえない贅沢なひとときだ。
ショップではガーデンのオリジナルグッズや植物の苗、北海道産の雑貨なども販売されている。ここでしか手に入らないアイテムをお土産に選ぶのも旅の記念になるだろう。施設全体はバリアフリーに配慮した設計がなされており、車いすやベビーカーでも多くのエリアを楽しむことができる。
北海道ガーデン街道と上川エリアの旅
大雪森のガーデンは「北海道ガーデン街道」を構成するガーデンのひとつに数えられる。北海道ガーデン街道は旭川から十勝・帯広にかけての約250キロメートルに点在するガーデン群を結んだルートで、それぞれ異なる個性を持つ庭園を巡る旅は、北海道の植物文化の豊かさを実感させてくれる。
アクセスはJR石北本線の上川駅から車で約10分。旭川からは車で約1時間10分の距離にある。旭川空港からのアクセスも比較的よく、レンタカーを利用して層雲峡方面や旭岳ロープウェイと組み合わせた観光ルートが人気だ。
上川町周辺には層雲峡温泉という北海道屈指の温泉地があり、大雪森のガーデンと組み合わせることで充実した滞在が楽しめる。柱状節理が連なる断崖絶壁と、その上流に広がる大雪山の自然は、ガーデンとはまた異なるスケールで北海道の大自然を体感させてくれる。冬季には「層雲峡氷瀑まつり」が開催されるなど、上川エリアは一年を通じて多様な魅力を持っている。
大雪森のガーデンを訪れるなら、できれば半日以上の時間を確保したい。急いで回るより、ゆっくりと花と向き合いながら森の空気を全身で感じる時間を大切にしてほしい。北海道の大地が育む植物の力強さと繊細さに触れたとき、この庭が多くの人に愛され続ける理由がきっとわかるはずだ。
액세스
旭川市から国道39号を東へ車で約60分
영업시간
9:00〜17:00(5月〜10月)
예산
800円