日本で体験するアーユルヴェーダ|心身のバランスを整える伝統療法
アーユルヴェーダとは|5,000年の知恵が現代に息づく
アーユルヴェーダとは、サンスクリット語で「アーユス(生命)」と「ヴェーダ(知識・科学)」を組み合わせた言葉で、「生命の科学」を意味します。インド・スリランカで5,000年以上前に生まれた世界最古の伝統医学のひとつであり、WHO(世界保健機関)にも伝統医療として認められています。
アーユルヴェーダの根本思想は「予防医学」です。病気になってから治すのではなく、日々の生活習慣を通じて心身のバランスを保ち、病気にならない体を作ることを目指します。食事、運動、睡眠、瞑想、マッサージ、ハーブの活用など、生活のあらゆる面からアプローチする包括的な健康体系です。
日本でアーユルヴェーダが注目され始めたのは1990年代後半ですが、近年はストレス社会への対処法として、また自然志向のウェルネスへの関心の高まりから、改めて大きな注目を集めています。エステサロンやスパだけでなく、ヨガスタジオ、自然食レストラン、さらには医療機関でもアーユルヴェーダの考え方を取り入れるケースが増えています。
3つのドーシャで知る自分の体質
アーユルヴェーダの最も特徴的な概念が「トリドーシャ理論」です。人間の体には「ヴァータ(風)」「ピッタ(火)」「カパ(水)」という3つのエネルギーが存在し、このバランスが健康の鍵を握るとされています。
ヴァータ体質の特徴は、痩せ型で肌が乾燥しやすく、行動力があるが疲れやすい。冷え性や便秘になりやすく、環境の変化に敏感です。創造力が豊かで新しいことが好きですが、不安になりやすい面もあります。
ピッタ体質は中肉中背で体温が高く、食欲旺盛。消化力が強く、知性的でリーダーシップがありますが、怒りっぽく完璧主義の傾向があります。夏場に体調を崩しやすく、炎症系の肌トラブルが出やすい体質です。
カパ体質はがっしりした体格で肌がしっとりしており、穏やかで忍耐力があります。体力はありますが代謝が低く、太りやすい傾向があります。寒い季節や雨の日に体が重くなりやすいのが特徴です。
実際には一つのドーシャだけが突出することは少なく、2つのドーシャが優位な混合型(ヴァータ・ピッタ型など)が多いです。日本のアーユルヴェーダサロンでは、初回にカウンセリングで脈診や問診を行い、個人のドーシャバランスを診断してくれます。
日本で受けられる主なアーユルヴェーダ施術
アーユルヴェーダの施術で最も知られているのが「アビヤンガ」です。温めたセサミオイル(ごま油)を全身に塗布し、ドーシャに合わせたリズムと圧で全身をマッサージする施術です。オイルが毛穴から浸透して体内の老廃物(アーマ)の排出を促し、筋肉のこわばりを緩め、深いリラクゼーションをもたらします。施術時間は60〜90分で、料金は10,000〜20,000円程度が相場です。
「シロダーラ」はアーユルヴェーダの代名詞ともいえる施術で、額の中央(第三の目)に温かいオイルを一定のリズムで垂らし続けます。深いリラクゼーション効果があり、不眠、頭痛、ストレスの緩和に効果的とされています。「究極の瞑想体験」とも称され、施術中に眠ってしまう方も少なくありません。施術時間は30〜45分で、料金は8,000〜15,000円程度です。
「ガルシャナ」は絹の手袋を使ったドライマッサージで、オイルを使わないためオイル施術に抵抗がある方にも適しています。リンパの流れを促進し、肌のくすみを改善する効果があります。カパ体質の方や朝の目覚めを良くしたい方に特におすすめです。
東京では南青山や恵比寿エリアに本格的なアーユルヴェーダサロンが集中しており、大阪では心斎橋や梅田エリアに実力派のサロンがあります。地方都市でも仙台、福岡、京都などを中心にサロンが増えており、宿泊型のアーユルヴェーダリトリートを提供する施設も全国各地に登場しています。
毎日のセルフケア|アーユルヴェーダの養生法
サロンでの施術だけでなく、日常生活にアーユルヴェーダの知恵を取り入れることで、心身のバランスを整えることができます。アーユルヴェーダの養生法「ディナチャリヤ(日課)」から、実践しやすいものを紹介します。
朝の舌磨き(ジファ・プラクシャーラナ)は最も簡単に始められるセルフケアです。起床直後に舌磨き器(銅製が理想、ステンレスでも可)で舌の奥から手前に向かって5〜10回なぞります。夜間に舌に溜まった老廃物(アーマ)を除去することで、消化力の向上と口臭予防に効果があります。舌磨き器はインド雑貨店やオンラインショップで500〜2,000円程度で購入できます。
セサミオイルを使った自己マッサージ(アビヤンガ)は、温めたオイルを全身に塗ってセルフマッサージする方法です。太白ごま油をスーパーで購入し(500円程度)、100℃に一度加熱してから冷まして保存します(キュアリング処理)。入浴前に全身に塗り、10〜15分置いてからお風呂で洗い流すだけで、肌の保湿、血行促進、リラクゼーション効果が得られます。
白湯(さゆ)を飲む習慣もアーユルヴェーダの基本です。やかんで水を沸騰させ、10〜15分ほど沸かし続けてから適温に冷ましたものを、朝一番にコップ1杯飲みます。消化の火「アグニ」を活性化し、体内の老廃物を洗い流す効果があるとされています。
アーユルヴェーダ的食事法|6つの味を意識する
アーユルヴェーダでは食事を「薬」と同等に重視します。特徴的なのが「6味(シャッドラサ)」の考え方です。甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味の6つの味を毎食バランスよく摂ることで、ドーシャのバランスが整うとされています。
日本の和食はこのアーユルヴェーダの食事原則に非常によく合致しています。ご飯(甘味)、味噌汁(塩味・甘味)、漬物(酸味・塩味)、焼き魚(辛味・甘味)、ほうれん草のおひたし(苦味・渋味)——一汁三菜の和定食は、6味が自然に揃う理想的な食事なのです。
ドーシャ別の食事アドバイスとして、ヴァータ体質の方は温かくしっとりした食事を心がけ、生野菜や冷たい飲み物は控えめに。ピッタ体質の方は辛いものや酸っぱいものを控え、甘味や苦味のある食品を多めに。カパ体質の方は温かくスパイシーな食事を好み、甘いものや重い食事は控えましょう。
日本でアーユルヴェーダを体験することは、自分自身の心身と向き合う貴重な機会です。5,000年の知恵は、ストレスフルな現代社会を生きる私たちに、「自分らしい健康」のヒントを与えてくれます。SOROU.JPでは、アーユルヴェーダサロンやウェルネス施設の情報も掲載していますので、体験の第一歩にお役立てください。
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